娑婆界しやばかい)” の例文
茂吉の特色を説明し出せば、それだけでも数頁に及ぶかも知れない。茂吉は「おひろ」の連作に善男子の恋愛を歌つてゐる。「死にたまふ母」の連作に娑婆界しやばかい生滅しやうめつを語つてゐる。
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それは恐らくは近来の造語「生活者」に対する意味を持つてゐるのであらう。けれども若し厳密に言へば、いやしくも娑婆界しやばかいに生まれたからは何びとも「人生の従軍記者」になることは出来ない。
(竹の枝は吹かれてゐる。娑婆界しやばかいの風に吹かれてゐる。)
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)