塗籠くら)” の例文
筒井はもう猶予できずに姉弟に家にはいるようにいい、とり急いで塗籠くらの階上にのぼって行った。その重いほこりの深い扉を開けると、門前一帯が見迥みはるかされた。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
筒井は扉にしっかりつかまり少時うごかなかった。貞時はそれを知らず、筒井は急いで塗籠くらから下りて行った。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
しかも、落葉のずれはあたらしいいささかの乱れを見せていたが、まごう方もない女の足あとだった。経之は池をまわり、広庭につづく、ひとつは塗籠くらへ、ひとつは定明の館に通ずる径を行った。
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)