国頭クニガミ)” の例文
「花売の縁」は、首里の士族森川モリカハシーが零落して妻子を首里に残し、自分は国頭クニガミといふ田舎——昔の奥州といつた所——へ働きに行く。
組踊りの話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
国頭クニガミ大宜味オホギミ村の青年団の発会式に、雀の迷ひ込んだのを、此会の隆んになる瑞祥だ、と喜び合うたのは、近年の事である。
琉球の宗教 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
此は、国頭クニガミ地方が、北山時代からの神道を伝へて、幾分、中山・南山の神道と趣きを異にしてゐる所があるからであらう。
琉球の宗教 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
唯形式だけでも、いまだに、独身を原則として居るのは、国頭クニガミの巫女たちで、今帰仁ナキジン阿応理恵アオリヱは独身、辺土のろは表面独身で、私生の子を育てゝゐる。
琉球の宗教 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
国頭クニガミの山の緋桜のやうに、寂しいけれど、ぽつかりとのどかに匂うて居た沖縄の音楽・舞踊・演劇を綜合した組踊りも、今は再見られぬ夢と消えてしまつたのであらう。
沖縄を憶ふ (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
其の鮎の獲れる場処と言ふのは、国頭クニガミ海道の難処、源河の里の水辺である。里の処女の姿や、ナサケを謡ふ事が命の琉球の民謡には、村の若者のとりとめぬやるせなさの沁み出たものが多い。
若水の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
首里宮廷の勢力の強く及んだ島尻・中頭は其でもよかつた。君主の根じろであつた島の北部国頭クニガミ郡には、やはり伝来の「さう/″\しさ」が充ちてゐて、今ではそろ/\はけ口を探し出してゐる。
若水の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)