噴騰ふんとう)” の例文
血は七尺も噴騰ふんとうして月を黒い霧にかすめた。満身の汗となって、一斗の酒も発散してしまったであろう張飛は、ほっとわが姿を見まわして
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
直感に、さっと、無数の影が、往来へ散らばると、一瞬、土蔵はぐわうん——と自身を破壊して、炎と猛炎が、割れた口から、一丈も噴騰ふんとうした。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眼の前に起ったけもののような絶叫と、どす黒い血の噴騰ふんとうに、頼朝自身すらびっくりした。はっきり眼がめた心地だった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夢中でり下ろした刀に異様な手ごたえがした。蒲団をなぐったような反撥を腕に感じた途端に、庄次郎は生まれて初めて、人間の生血を自分の刀から噴騰ふんとうさせて、鼻先から花火でも揚がったように
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)