吐月峰とげっぽう)” の例文
細道の左右に叢々たる竹藪が多くなってやがて、二つの小峯が目近くそびえ出した。天柱山に吐月峰とげっぽうというのだと主人が説明した。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
父は煙草をのんではしきりに吐月峰とげっぽうをたたいた。母も黙ったまま針を取り上げている。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
驚くほど烈しく煙管きせる吐月峰とげっぽうをたたきつけながら、自分のすぐ後ろにある座敷金庫から十円札を二枚取りだし、乞食にでもやるように、それを園の前にほうりだして苦がりきっていた父の顔
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)