遮那王といえば、源家の嫡男ちゃくなん前左馬頭義朝さきのさまのかみよしともの末子で、幼名おさななを、牛若といった御曹子おんぞうしのことだ。常磐ときわとよぶ母の乳ぶさからはなされて、鞍馬寺へ追い上げられてから、もう、十年の余になる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)