偵知ていち)” の例文
山腹の総本家、祝氏の門では、はやくも偵知ていちしていたとみえる。三重の城壁と二つの荘門を堅め、銅鑼どら鼓笛こてきを鳴らすこと頻りに急であった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その間に、滝川一益は、秀吉の本陣地、矢田山の情況を充分に偵知ていちし得たものの如く、城中の首脳部を会して、“或る作戦”のふくみをたたえていた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の麾下きか三千が、にわかに、飯浦坂を去って、堀切から西の峰へ退き始めたことを、逸早く偵知ていちした羽柴方の大物見が、これを秀吉に報じたので、秀吉は
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉はあらかじめこの弱点を偵知ていちしていたが、杉原七郎左衛門の手勢にこれを攻めさせると、さしも不和な城兵も、そのときだけは一体に結束して、猛烈に寄手に当ってくるのだった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜならば、十七日以来、秀吉が大垣へ発して、岐阜へ作戦中のことを知っていた彼には、敵がこれを偵知ていちすれば、時を移さず、虚を撃って来ることは——必然的に察し得るところだったからである。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)