下女はしため)” の例文
われはその夜家にありて、二親の帰るを待ちしに、下女はしため来て父母帰り玉ひぬといふ。喜びて出迎ふれば、父かれて帰り、母は我を抱きて泣きぬ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
年端もゆかぬその内より、下女はしため代はりに追廻されて、天晴れ文盲には育て上げられたれど、苦労が教へし小賢こさかしさに、なかなか大人も及ばぬふんべつ思慮する事もあり。
小むすめ (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
胸当むねあてにつづけたる白前垂まえだれ掛けたる下女はしため麦酒ビールの泡だてるを、ゆり越すばかり盛りたる例の大杯おおさかずきを、四つ五つづつ、とり手を寄せてもろ手に握りもち
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)