脇指わきざし)” の例文
このばけもの、といったか、河童かっぱ、といったか、記してないが、「いでその手ぶし切落さんと、若き人、脇指わきざし、」……は無法である。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
昔の武士でも川狩に行く時は大概大小をたばさむやうの事はなく脇指わきざし一本位で行つたらうと思ふが、脇指でも刀といふであらうか。その上
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
たもつさんの記憶している五百いおの話によるに、枳園はお召縮緬めしちりめんきものを着て、海老鞘えびざや脇指わきざしを差し、歩くにつまを取って、剥身絞むきみしぼりふんどしを見せていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
まもる者なくては叶はずと云ながらの友次郎が脇指わきざしをお花に渡し此脇指を肌身はだみはなさず何事も相談して怪我けがなき樣に暮すべしと懷中くわいちうより二包ふたつゝみの金子と藥の入し印籠いんろう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「伝蔵は主人の枕元にある脇指わきざしで斬ったのですが、その脇指が吉良上野こうずけ殿の指料さしりょうであったと云うことです。その由来は存じませんが、先祖代々伝わっているのだそうです」
半七捕物帳:61 吉良の脇指 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
たゞとひやうしに長き脇指わきざし 来
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
あくうらに有者はてんこればつあくほかあらはるゝ者は人是をちうすとかやさても吾助は宅兵衞を易々やす/\ころくわい中の金五兩二分と脇指わきざしうばひ取其上足手搦あしてがらみなるお兼さへ其處に命を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二代目の次郎左衛門は長い脇指わきざしつかをそらして、方々の賭場へ大手を振って入り込んだ。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かたきと付ねらふ事ひとへ麁忽そこつの至りなり然ながらしひ勝負しようぶのぞむと成ばかたぱしより我手にかけ今のまよひを覺してくれんと彼の宅兵衞を殺して奪ひ取たる脇指わきざしを引拔て一討ひとうちとお花を目掛めがけうつかゝるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)