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燈火
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とうくわ
殊に
歳暮の夜景の如き
橋上を往来する車の
灯は沿岸の
燈火と相乱れて
徹宵水の上に
揺き動く
有様銀座街頭の
燈火より
遥に美麗である。
一夜幼君燈火の
下に
典籍を
繙きて、
寂寞としておはしたる、
御耳を
驚かして、「
君、
密に
申上ぐべきことの
候」と
御前に
伺候せしは、
君の
腹心の
何某なり。
道子は
橋の
欄干に
身をよせると
共に、
真暗な
公園の
後に
聳えてゐる
松屋の
建物の
屋根や
窓を
色取る
燈火を
見上げる
眼を、すぐ
様橋の
下の
桟橋から
河面の
方へ
移した。
其ればかりでなく黒ずんだ
天井と
壁襖に
囲まれた二階の
室がいやに
陰気臭くて、
燈火の多い、人の
大勢集つてゐる
芝居の
賑ひが、
我慢の
出来ぬほど恋しく思はれてならなかつたのである。