寄集よりあつま)” の例文
一日近親の者は寄集よりあつまって協議をこらした。そして結果は伯爵家を除籍して別家させなければなるまいという事になった。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
其れが極めてやはらかに組んであるのと、横に立ててうはすぼみの輪にされるのとでピンで止めた時はある一種面白い形の物が寄集よりあつまつて居る様になるのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
純綿の一声ひとこえに、寝ている踊子も起直おきなおって、一斉に品物のまわりに寄集よりあつまる騒ぎ。廊下を歩み過ぎる青年部の芸人の中には、前幕の化粧を洗いおとしたばかり。
勲章 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「貧窮組というのは、貧乏人の寄集よりあつまりなんだ、貧乏でキュウキュウ言ってるからそれで貧窮組というんだなんて、貧乏を見えにして、党を組んで、旗を立てて、車を曳いて押歩いてる」
お前もちいさい時から田舎者に成ったけれども、江戸生れだそうだが、斯うやって江戸子えどっこ同志で寄集よりあつまるとは誠に頼もしいものだ、毎度種々いろ/\馳走になって済まない、決して構ってくれるなよ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
また御贔負ごひいきをの嬌音きやうおんこれたやすくはひがたし、れが子供こども處業しわざかと寄集よりあつまりしひとしたいて太夫たゆうよりは美登利みどりかほながめぬ、伊達だてにはとほるほどの藝人げいにん此處こゝにせきめて、三味さみふゑ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
取繕とりつくろ何喰なにくはぬ顏して有しに其日の夕暮ゆふぐれに何とやらんあやしきにほひのするに近所きんじよの人々寄集よりあつまりて何のにほひやらん雪の中にて場所も分らず種々さま/″\評議に及びかゝる時には何時いつも第一番にお三ばゝが出來いできた世話せわ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その他には梅とかえで躑躅つつじと、これらが寄集よりあつまって夏の色を緑に染めているが、これは幾分の人工を加えたもので、門を一歩出ると自然はこの町の初夏を桜若葉でいろどろうとしていることがすぐ首肯うなずかれる。
磯部の若葉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
また梅が散る春寒はるさむの昼過ぎ、磨硝子すりガラスの障子を閉めきった座敷の中は黄昏たそがれのように薄暗く、老妓ばかりが寄集よりあつまった一中節いっちゅうぶしのさらいの会に、自分は光沢つやのない古びた音調の
銀座界隈 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それは有難ありがていこんだ、これ多助よ、去年の六月三十日みそかわれえ親父が死ぬ時に枕元におれを呼んで云うのに、おえいは多助と従弟同志なり、今の母様かゝさまは多助のためには実の叔母だ、一家に血統ちすじ寄集よりあつま
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
致し候に翌年よくねん三月安産あんざんせしが其夜の中に小兒せうに相果あひはて娘も血氣ちのけ上りて是も其夜のあかつきに死去致し候に付き近邊きんぺんの者共寄集よりあつまり相談するも遠國者ゑんごくもの菩提所ぼだいしよなく依て私しの寺へ頼みはうむり遣し候其後お三婆は狂氣きやうき致し若君樣わかぎみさま
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
君江はかえってそれをよい事に、ひまな女たちの寄集よりあつまっている壁際のボックスに腰をかけた。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
鉄砲洲てっぽうずなる白河楽翁公しらかわらくおうこう御下屋敷おしもやしき浴恩園よくおんえんは小石川の後楽園こうらくえんと並んで江戸名苑の一に数えられたものであるが、今は海軍省の軍人ががやがや寄集よりあつまって酒を呑む倶楽部クラブのようなものになってしまった。