鳴渡なりわた)” の例文
喜悦よろこびいさみて下りけり依て瀬川せがはが評判江戸中鳴渡なりわたり諸方よりもらはんと云者數多あまたあれ共當人たうにんは是を承引うけひかず今迄の難澁なんじふとても世に云苦勞性くらうしやうなるべし遁世して父と夫のあと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
八大竜王はちだいりゅうおう鳴渡なりわたりて、稲妻いなずまひらめきしに、諸人しょにん目を驚かし、三日の洪水を流し、国土安穏あんおんなりければ、さてこそ静のまいに示現ありけるとて、日本一と宣旨せんじたまわりけると、うけたまわそうろう。——
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
時刻じこく時刻じこくゆゑ、おれこゝろ殘忍ざんにん兇暴きょうばうゑたるとら鳴渡なりわた荒海あらうみよりもたけしいぞよ。
あし枯葉かれはをぬら/\とあをぬめりのみづして、浮草うきぐさ樺色かばいろまじりに、船脚ふなあしころの、五位鷺ごゐさぎはうちやう。またひとしきりはげしくきふに、なめらかなおもみづひゞいて、鳴渡なりわたるばかりとつたが。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おくりける或日兩國邊よりかへ途中とちうにはか夕立ゆふだち降來ふりきたはたゝがみ夥多敷おびたゞしく鳴渡なりわたれども雨具あまぐなければ馬喰町の馬場のわき出格子でがうしの有る家を幸ひに軒下のきした立停たちどまり我がたくも早二三町なれども歸ることかなはあめぬれて居るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うらみながき夜も早晩いづしか更行ふけゆはやあけ六ツに間も有じとて切腹の用意にかゝらるゝに明六ツの時計とけい鳴渡なりわたれば越前守は奧方おくがたに向ひせがれ忠右衞門切腹致さば其方介錯かいしやく致せ其方自害じがいせば予がぢき介錯かいしやくすべし予が切腹せば介錯かいしやくには大助致すべしと言付いひつけて又忠右衞門に向ひ最早もはや時刻じこくなるぞおくれを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)