高天原たかまがはら)” の例文
由「この小枕は高天原たかまがはらに紙が一枚はひどいねえ、これは酷いが、まアいゝ、これを買っても宿屋で夜具を出すから枕も付きそうなものだ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
待望の神風が吹くどころか敗戦と同時に高天原たかまがはらはおとぎばなしの本性をあばかれ、皇室の横に座っていた神々は突き落とされ
ロザリオの鎖 (新字新仮名) / 永井隆(著)
天地渾沌てんちこんとんとして日月じつげついまだ成らざりし先高天原たかまがはらに出現ましませしにりて、天上天下万物のつかさと仰ぎ、もろもろの足らざるを補ひ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼は風雨も、山々も、あるいはまた高天原たかまがはらの国も忘れて、洞穴をめた脂粉しふんの気のなかに、全く沈湎ちんめんしているようであった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
高天原たかまがはら神界しんかいから一だんくだったところが、りもなおさずわれわれの大地だいち神界しんかいで、ここに君臨くんりんあそばすのが、もうすまでもなく皇孫命様こうそんのみことさまにあらせられます。
たとえば沖縄のオボツカクラは、ちょうど本州の高天原たかまがはらに相当するものらしいが、あれに比べるとなお一段と茫漠ぼうばくとしていて、ほとんと地理上の概念ともいうことができない。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
の国に赴きたまわんとして素盞嗚尊すさのおのみこと、まず天照大神あまてらすおおみかみに、お別れ告げんと高天原たかまがはらに参る。
弓道中祖伝 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そのような力味声りきみごえ出さば腹が減ろうぞ。もっとおとなしゅう物を申せい。人はな、笑いたい時笑い、泣きたい時泣くものと、高天原たかまがはら八百万やおよろずの御神達が、この世をお造り給いし時より相場が決ってじゃ。
高天原たかまがはら男峰をみねの岩のいただきに影黒くある君と思へや
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
高天原たかまがはらの国の若者たちは、それ以来この容貌の醜い若者に冷淡をよそおう事が出来なくなった。彼等のある一団は彼の非凡な腕力に露骨な嫉妬しっとを示し出した。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
さらにそのモー一つおくには、天照大御神様あまてらすおおみかみさまがおひかえになってられますが、それは高天原たかまがはら……つまり宇宙うちゅう主宰神しゅさいしんおわしまして、とてもわたくしどもからはかることのできない
天を根源とすることは言わば理論であって、道路もなく方角もさだかならず、まぼろしのりどころというものが無い。高天原たかまがはらとても同じことだが、是にはまだ些少さしょうの地理的観念がある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼が高天原たかまがはらの国をめぐる山々の峰を越えたのは、ちょうどその二日経った、空模様の怪しい午後であった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
現在げんざいわたくしどもの境涯きょうがいからいえば、最高さいこうのところは矢張やはむかしからおしえられてるとおり、天照大御神様あまてらすおおみかみさましろしめす高天原たかまがはら神界しんかい——それが事実上じじつじょう宇宙うちゅう神界しんかいなのでございます。
これを下品だとして顧みないような学者は、いつまでも高天原たかまがはらだけを説いているがよい。自分たちは今ある下界の平民の信仰が、いかに発達してこうまで完成したかを考えてみようとするのである。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
既に父とならうとしてゐた彼は、この宮の太い棟木むなぎの下に、——赤と白とに狩の図を描いた、彼の部屋の四壁の内に、高天原たかまがはらの国が与へなかつた炉辺の幸福を見出したのであつた。
老いたる素戔嗚尊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)