雉子きぎす)” の例文
ぴよぴよと啼くは雛鶏ひなどり。雀子はちゆちゆとさへづり、子を思ふ焼野の雉子きぎすけんけんと夜も高音うつ。現身うつしみの鳥の啼くのなぞもかく物あはれなる。
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
寄つてお出でよと甘へる声も蛇くふ雉子きぎすと恐ろしくなりぬ、さりとも胎内十月とつきの同じ事して、母の乳房にすがりし頃は手打々々てうちてうちあわわの可愛げに
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
焼野やけの雉子きぎす夜の鶴……為替の受取なぞがチラチラ混っている。そこで一同の中から二人の代表が選まれて、その手紙の主を長崎へ迎いに行く事になった。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「無礼なり何奴なにやつなれば、われを野良犬とののしるぞ」「無礼なりとはなんじが事なり。わが飼主の打取りたまひし、雉子きぎすを爾盗まんとするは、言語に断えし無神狗やまいぬかな」
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
が、五位だけは、まるで外の話が聞えないらしい。恐らく芋粥の二字が、彼のすべての思量を支配してゐるからであらう。前に雉子きぎすいたのがあつても、箸をつけない。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「焼け野の雉子きぎすというじゃねえか。子供を持っている俺にゃ、雉子の肉は、美味くねえや」
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『春の野に、あさる雉子きぎすのつま恋に、おのが在所ありかを人に知れつつ』と、うたわれた古歌を存じおるか! その雉子きぎすこそ土岐頼春! あっぱれ右近府の蔵人くらんどとして、若いながらも武名高く
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
焼野やけの雉子きぎすよるの鶴、錆田さびたの雀は子をかばう。いわんや、鯨は魚の長。愛情の深さはまたなかなか。……さて、皆々さま、これなるは、つき鯨のより鯨のながれ鯨のとそんな有りふれた鯨ではござりませぬ。
なく雉子きぎす微雨に麦の茎立ぬ 鷺雪
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
雉子きぎすも啼こに 啼こによ
極楽とんぼ (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
焼野の雉子きぎす、夜の鶴。この愚息なぞも法螺丸にとっては、頭山満と肩を並べる程度の苦手かも知れない。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かおかおと啼くは鴉、ぴよぴよと啼くは雛鶏ひなどり、雀子はちゆちゆとさへづり、子を思ふ焼野の雉子きぎす、けんけんと高音たかねうつ。現身うつしみの鳥の啼くの、なぞもかく物あはれなる。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
藪木やぶきまじ針金雀花はりえにしだ、熊笹の中から飛び立つ雉子きぎす、それから深い谷川の水光りを乱すあゆの群、——彼はほとんど至る所に、仲間の若者たちの間には感じられない、安息と平和とを見出した。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
尾花たか生茂おいしげれる中に、斜めにたてる石仏いしぼとけは、雪山せつざんに悩む釈迦仏しゃかぶつかと忍ばる。——見ればこけ蒸したる石畳の上に。一羽の雉子きぎす身体みうち弾丸たまを受けしと覚しく、飛ぶこともならでくるしみをるに。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
啼け 啼け 雉子きぎす
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
焼野やけの雉子きぎす
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
躑躅さきしろき月夜をさぬつどり雉子きぎすとよめりこもらふらしも (五〇頁)
文庫版『雀の卵』覚書 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
今二匹が噬合ひはじめて、互ひに負けじと争ひたる、その間隙すきを見すまして、静かに忍び寄るよと見えしが、やにはに捨てたる雉子きぎすくわへて、脱兎の如く逃げ行くを、ややありて二匹は心付き。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
雉子きぎすア啼くから
おさんだいしよさま (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
月の夜のましろき躑躅つつじくぐりくぐり雉子きぎすひそみたりしだり尾を曳き
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ほろろうつ山の雉子きぎすの声きけば父かとぞ思ふ母かとぞ思ふ。行基
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
雉子きぎす啼く蔭山なだりこもごもに茅萱萌えたり丹つつじはまだ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ここの宮光る若葉の葉ごもりに一羽雉子きぎすの聲ひらくなり
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
ここの宮光る若葉の葉ごもりに一羽雉子きぎすの声ひらくなり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
神の苑木立おもての眞日照りをあり雉子きぎすの一羽たふとさ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
神の苑木立おもての真日照りをあり雉子きぎすの一羽たふとさ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
澄みとほるさをの真竹に尾の触れて一声啼くか藪原雉子きぎす
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
つちふらす春の嵐はとよもさず雉子きぎす鳴き立つ聲ぞとよもす
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
つちふらす春の嵐はとよもさず雉子きぎす鳴き立つ声ぞとよもす
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
開けよ、聲を雉子きぎす
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
開けよ、声を雉子きぎす
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)