隊伍たいご)” の例文
そこで待合せて隊伍たいごを組んで人民広場へという順序だった。ゆくともう四五人の顔見知りが小さな赤旗とプラカードを中心に集っていた。
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
服装の点検が終ると、一列縦隊に隊伍たいごを組み、足並みそろえ、れいの行礼歩調というやつで、岡から浜のほうへ降りて行く。
キャラコさん:07 海の刷画 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
なるべく隊伍たいごをつくるようにしてこの街道をったり来たりするのも、それ相応の理由がなくてはかなわぬことを父は半蔵に指摘して見せた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と見れば、蛇形の列は忽然こつねんと二つに折れ、まえとは打ってかわって一みだれず、扇形おうぎがたになってジリジリと野武士の隊伍たいごを遠巻きに抱いてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
学校の生徒は八百人もあるのだから、体操の教師が隊伍たいごを整えて、一組一組の間を少しずつ明けて、それへ職員が一人か二人ふたりずつ監督かんとくとして割り仕掛しかけである。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
混亂こんらん隊伍たいごなかおこつた。寢呆ねぼけて反對はんたい兵士へいしもゐた。ポカンとそら見上みあげてゐる兵士へいしもゐた。隊列たいれつ後尾こうびにゐた分隊長ぶんたいちやう高岡軍曹たかをかぐんそうぐにきしつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
彼らはねじり廻すようにもつれあってのろくさと歩いていた。そしてながい隊伍たいごをつくった。殿しんがりには荷を積んだ車があった。駄馬は尻を揺ぶって重い荷をきだした。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
隊伍たいごをなした士卒も避ける。送葬の行列も避ける。この車の軌道を横たわるに会えば、電車の車掌といえども、車をとめて、忍んでその過ぐるを待たざることを得ない。
空車 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
警官隊と十数名の小屋の若い者とが、隊伍たいごを組んで、切り開かれた白昼の藪の間を進んで行った。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
中央の隊伍たいごが駆け足で前進してきた。すぐに人々は散乱し始めた。福音書の言葉に従えば最初のものが最後の者だった。しかし彼らは長くそうしてはいまいとつとめた。
人造人間部隊は、あいかわらず整然と隊伍たいごをととのえて、丘を下りて、こっちへやってくる。
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あの辺の青楼せいろうやなんかは、イヤもう、どこへ行っても伊賀訛いがなまりでいっぱいだ。毎日隊伍たいごを組み、豪刀をよこたえて、こけ猿の茶壺やいずこ? と、江戸市中をさがしまわっている。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
枚方ひらかたへくると、敗兵が、どての上に、下のあしの間に、家の中に、隊伍たいごも、整頓もなく騒いでいた。大小の舟が、幾十そうとなく、つながれていたが、すぐ一杯になって、次々に下って行った。
近藤勇と科学 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
大弓をげた偉大の父を真先に、田崎と喜助が二人して、さかさまに獲物を吊した天秤棒をかつぎ、其のあとに清五郎と安が引続き、積った雪を踏みしだき、隊伍たいご正しく崖の上に立現われた時には
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
暴徒らは不意を打たれたがなお辟易へきえきせず、再び隊伍たいごを整えていた。アンジョーラは叫んだ、「待て! むやみに打つな!」実際彼らは、最初の混乱のうちに同志打ちをしないとも限らなかった。
燕王の軍は塹塁ざんるいつくらず、たゞ隊伍たいごを分布し、陣を列して門とす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
群集は落ち着き払ってその号令に耳をすまして静かに行動を起こし、そうして階段通路をその幅員尺度に応じて二列三列あるいは五列等の隊伍たいごを乱すことなく、また一定度以上の歩調を越すことなく
火事教育 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
焼けだされた狼は、わずか三、四十人の隊伍たいごであったが、なにせよ、武器をもっている命知いのちしらずだからたまらない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて二十五人ずつ隊伍たいごをつくった人たちは樋橋を離れようとして、夜の空に鳴り渡る行進の法螺ほらの貝を聞いた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
岸邊きしべまるくかたまつてゐた兵士へいし集團しふだんはあわててした。わたしもそれにつづいた。そして、途切とぎれに小隊せうたいあとつてやうやくもとの隊伍たいごかへつた。はげしい息切いきぎれがした。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
停車場に凱旋がいせん軍隊を出迎えて、ひらめく小学生の国旗の前を軍楽の響きも勇ましく、隊伍たいご堂々と行進する兵隊さんをながめては、ゾーッと総毛立つ快感に涙ぐむことがあった。
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そのなかに霜降しもふりの外套がいとうを着た広田先生の長い影が見えた。この青年の隊伍たいごに紛れ込んだ先生は、歩調においてすでに時代錯誤アナクロニズムである。左右前後に比較するとすこぶる緩漫に見える。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
中尉の号令を待ちかねていたかのように、部隊はサッと小暗おぐらい営庭に整列した。点呼もすんだ。すべてよろしい。そこで直ちに部隊は隊伍たいごをととのえて、しゅくしゅくと行進をはじめた。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
上田、松代、松本の諸藩、榊原家さかきばらけ隊伍たいごにも、これで会うのが二度目だった。——彼はその砂埃りを浴びてれ違うと、急に心が暗くなって、道にも迷う気がして来た。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだそれでもあとからあとからと繰り込んで来る隊伍たいごがある。この馬籠峠の上まで来て昼食の時を送って行く武家衆はほとんど戦争の話をしない。戦地の方のことも語らない。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そういってれたので、私も隊伍たいごのうしろにしたがって歩き出しました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ところへまたも、一群の正規兵が、隊伍たいご粛々しゅくしゅくと、目の前を通りすぎた。ふさつきの立て槍を持った騎馬隊と鉄弓組の中間には、雪白の馬にまたがった眉目びもくするどい一壮士の姿が見えた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
総勢の隊伍たいごを、第一班から第六班までの備えに編み、騎馬の使番に絶えず前後周囲を見回らせ、隊列の整頓せいとんと行進の合図には拍子木ひょうしぎを用いることなぞ皆この人の精密な頭脳から出た。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
三十六人が十二名ずつ三ぎょうにわかれ、目にもあざやかな隊伍たいごをつくった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)