陶器すえもの)” の例文
十数年の長いあいだ、陶器すえものの技術をまなぼうため、みん景徳鎮けいとくちんに渡り、かの地にとどまるうち、異国の一女を妻として子まで生ました。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
手首の辺から下へ曲り、あの陶器すえものの招き猫の、あの手首そっくりであった。銅色の皮膚へ脂肪あぶらにじみ、それが焔に照らされて、露でも垂れそうにテラテラした。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
二つや三つの鐘を陶器すえもののようにこわされても、そんなことで己の法力がゆるみはしないのだ。
道成寺(一幕劇) (新字新仮名) / 郡虎彦(著)
「はい、産寧坂さんねんざかの下の陶器すえもの作りの家の老婆としよりが、夜泣き癖のある孫を負うて、子安こやす観音へ夜詣りに来ていたのでございました」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四方を木々に囲まれながら、一宇のちんが立っていて、陶器すえもので造った円形の卓が、その中央に置かれてあり、その上に、太巻の蝋燭が、赤黄色く燃えているのであった。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
供養に一と打ちすると陶器すえもののようにこわれてしまったのが、今夜ばかりはどうしてか、一つ一つに打ち出す呻き声がさっきのように谷底の小蛇の巣や蜘蛛の網にまでひびいて行ったのだから
道成寺(一幕劇) (新字新仮名) / 郡虎彦(著)
針屋、そろばん屋、陶器すえもの屋、その隣には鬼の念仏の絵看板、かね撞木しゅもくをもって町の守り神のように立っているかどは、大津絵おおつえをひさぐ室井半斎むろいはんさいの店である。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と云ったが、突然、棚から陶器すえものが転げ落ちるような声で笑い出し
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
山犬のおふだだの、山犬の木彫だの、山犬の陶器すえものだの——を参籠者が下山の折、買ってゆくのもそのためである。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白い陶器すえものの円い水盤とが、ぼんやりと見えるばかりであった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こうなると、百助のえた腕は、恐ろしい悪事の構成に利用される。彼はかまの中の陶器すえものを、巧みに、火加減をもって悪作あくさくなものと変質させようとするのである。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
器用者の侯健こうけんは、やき物の窯場かまばも設けて、陶器すえものを焼きはじめ、武器の工廠こうしょうでは、連環れんかん馬鎧うまよろいからカギ鎗、葉鉄うすがねよろい、またあらゆる兵具を、日夜さかんに作っていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
唐船からふねが帆ばしらをならべ、街には、舶載物はくさいものを売る店舗みせや、武具をひさぐ商人あきんどが軒をならべ、裏町には、京やさかいから移住して来た工匠たくみたちが、糸を染め、やじりを鍛え、陶器すえものを焼き
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
陶器すえもの一つにも、身に着ける肌着の一針にも、絶対に、女性の指に触れないもののみで潔浄けつじょうを守っている僧の生活なのである。どんな微かにでも、女粉じょふんに触れたものはそれを感じる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
峡谷たにあいの山村に、春が過ぎ夏が過ぎ、山そのものが色絵錦いろえにしき陶器すえもののような秋になった。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「う、うぬの陶器すえものは、今日ッかぎりこの百助が手にかけねえからそう思えッ」
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
難かしい顔を示しながら、大蔵は陶器すえもの煙管きせるで、すぱりとくゆらしながら
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、呂宋兵衛るそんべえは、陶器すえものパイプを口からおとして
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)