芝草しばくさ)” の例文
ようや山林地帯さんりんちたい出抜でぬけると、そこはやま頂辺てっぺんで、芝草しばくさが一めんえてり、相当そうとう見晴みはらしのきくところでございました。
線路のへりになったみじかい芝草しばくさの中に、月長石ででもきざまれたような、すばらしい紫のりんどうの花が咲いていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
夜になり月がのぼって、池の面が白くかぎろいはじめるころ、若者は恋人をともなって、芝草しばくさの上のつゆをふみながらふたたびいずみのほとりにやってきた。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
車の土台どだいになっていて、その上に枝や芝草しばくさがたくさんおいてあります。けれども、この巣はとても古いので、そこにある草や木には根がえています。
何でこしらえたかというと土の付いた儘の芝草しばくさ煉瓦石れんがせきのような具合に、長さ一尺二寸、幅七寸、厚さ三寸位に切って干し固め、それを積み立てて家を拵える。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
植木類は、全部抜き去られてしまったが、芝草しばくさが少し残っているのに手を入れたら、いくらか増加した。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
このあたりを取り巻いているものは、ひろびろとした荒寥こうりょうたる環境かんきょうばかりでした。からびた褐色かっしょくのヒースと、うす黒くげた芝草しばくさが、白い砂洲さすのあいだに見えるだけでした。
芝草しばくさが青々とのびだしています。ちょうがとんでいます。空には高く、雲雀ひばりがないています。
風ばか (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
空はかすみだってあがって往った鳥は、しばらく姿を消して鳴声ばかり聞えていたが、やがていきおいよくななめにおりて来て花の中に隠れた。林の下は青毛氈あおもうせんを敷いたように芝草しばくさが生えていた。
山寺の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
早く、早く、まるで私は熱に浮かされたやうに行つた。内部から四に擴がつた頼りなさが私を襲つて、私は倒れて了つた。暫くの間濡れた芝草しばくさの上に顏をつけたまゝ、私は地上に横はつてゐた。
芝草しばくさほゝを、背筋せすじを、はりのやうに
線路せんろのへりになったみじかい芝草しばくさの中に、月長石げっちょうせきででもきざまれたような、すばらしいむらさきのりんどうの花がいていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そして、芝草しばくさがたいそううすいために、下の白い石灰質せっかいしつ地肌じはだかがやいてみえました。
嘉十は芝草しばくさの上に、せなかの荷物をどっかりおろして、とちと粟とのだんごを出してべはじめました。すすきはいくむらも幾むらも、はては野原いっぱいのように、まっ白に光って波をたてました。
鹿踊りのはじまり (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
嘉十かじふ芝草しばくさうへに、せなかの荷物にもつをどつかりおろして、とちあわとのだんごをしてべはじめました。すすきはいくむらもいくむらも、はては野原のはらいつぱいのやうに、まつしろひかつてなみをたてました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)