白骨はっこつ)” の例文
岩壁のところどころに谷間が暗い影をしずめ、噴火で押しだされた軽石が、雨風にさらされて白骨はっこつのように落々らくらくと散らばっている。
藤九郎の島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
四人よつたり各自めいめい木箸きばしと竹箸を一本ずつ持って、台の上の白骨はっこつを思い思いに拾っては、白いつぼの中へ入れた。そうして誘い合せたように泣いた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
絶海ぜっかい孤島ことうに、自分ひとりがとりのこされている。このままでいれば、ひぼしになるか、病気になるかして、白骨はっこつしてしまうであろう。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「お雪ちゃん、んでいる人を癒す白骨はっこつのお湯は、またいきた人を白骨としてかえす力のあることを御存じはありますまい」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鳥やねずみねこ死骸しがいが、道ばたやえんしたにころがっていると、またたく間にうじ繁殖はんしょくして腐肉ふにくの最後の一ぺんまできれいにしゃぶりつくして白骨はっこつ羽毛うもうのみを残す。
蛆の効用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
南無三宝なむさんぼう、此の柱へ血が垂れるのが序開じょびらきかと、その十字の里程標の白骨はっこつのやうなのを見て居るうちに、よっかゝつて居た停車場ステエションちた柱が、風もないに、身体からだおしで動くから
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かんなかには、そこにのこっている白骨はっこつと、不完全ふかんぜん土器どきと、七つのかがみなどがあって、人々ひとびとをひいたのでした。その死者ししゃは、学者がくしゃが、骨格こっかくから判断はんだんして、まだわかおんなであったとわかりました。
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうです、そこに白骨はっこつのお湯というお湯が湧いているんだそうです。そこへ入りますと、難病がみんななおるのだと久助さんが教えてくれました。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
手に入れなければいかん。その魚の標本箱に、われわれの白骨はっこつまでそえてやるんじゃ、君もおもしろくなかろうからね
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その仲間というのは、山の中で縊死自殺いしじさつの形で白骨はっこつになっているのを発見されたが、遺書もなんにもない。
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
信濃の国の白骨はっこつの温泉というのが、たいそう病にくそうだから、わたしは、いっそ、お前をその白骨の温泉とやらへ連れて行って、骨が白くなるほど湯につけて上げたら
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
博士一行は宇宙で遭難し白骨はっこつになるのではないか、と心配されている、といういやな報道もあった。
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
白骨はっこつの温泉へ……」
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
遠方からそこを望遠鏡でのぞいた者の話によると、人間の白骨はっこつばかりでなく、時々まぎんで来る熊や鹿や其の他の動物のしかばねや骨がおびただしく死の谷の中に散見するそうである。
科学時潮 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
白骨はっこつになって檻の中に倒れているのは、門田虎三郎だったのである。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
くずれる白骨はっこつ
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)