白晝まひる)” の例文
新字:白昼
戸外はまるで白晝まひる、つい今しがた山の端を離れたらしい十七夜の月はその秋めいた水々しい光を豐かに四邊の天地に浴びせて居る。
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
といふ恐ろしい女の悲鳴と、驚くべき異常の騷動とが、夏の白晝まひるの物倦い情景を一變させた。巡査が馳けつけた。群集があつまつてきた。
室生犀星に与ふ (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
白晝まひるとなりてより、我無聊は愈〻甚だしければ、又車を驅りてこゝを立ち、一の平原に入りぬ。緑草の鬱茂せるさまはポンチニイの大澤たいたくに讓らず。
つき浩々かう/\わたりて、くはふるにはるかのおき停泊ていはくしてる三四そうぼうこく軍艦ぐんかんからは、始終しじゆう探海電燈サーチライトをもつて海面かいめんてらしてるので、そのあきらかなること白晝まひるあざむくばかりで
……へだてたカアテンのうちなる白晝まひるに、花園はなぞのゆめごとき、をとこかほぢつ
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なぎつる白晝まひるに青き海の
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
白晝まひるのをりの眞砂路まさごぢ
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
海には空想のひだがなく、見渡す限り、平板で、白晝まひるの太陽が及ぶ限り、その「現實」を照らしてゐる。海を見る心は空漠として味氣がない。
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
されど彼語を出しゝは、我手を握りて、眞面目なる思慮ありげなる目を我面に注ぎたる未知の男なりき。我は廣闊にして敞明しやうめいなる一室に臥せり。時は白晝まひるなりき。
つき白晝まひるのやうにあきらかだが、小蒸滊船こじようきせんかたち次第々々しだい/\おぼろになつて、のこけむりのみぞなが名殘なごりとゞめた。
現實の情緒は、悲哀にまれ、恐怖にまれ、理智の常識する白晝まひるの太陽に照らされて、夢の闇の中で見るやうに強烈でなく、晝間の殘月のやうにぼんやりしてゐる。
(旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
電燈でんとうひかり白晝まひるあざむかんばかりなる市街しがい上陸じやうりくして、ひそかに櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさより委任ゐにんけたる、電光艇でんくわうていよう秘密藥品ひみつやくひん買整かひとゝのへ、十二のたる密封みつぷうして、いま特更ことさらふね艤裝ぎさうする必要ひつえうもなく
ひつそりとした白晝まひる歩廊ほうむに、巨大な列車が夢のやうに靜止してゐる。
大船駅で (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
赤道直下の白晝まひる。風もなく音もない。萬象の死に絶えた沈默しじまの時。
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
白晝まひるのかなしい思慕から
定本青猫:01 定本青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
白晝まひるのかなしい思慕から
青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)