生糸きいと)” の例文
そのほか色々の物にそういう違いがあると申しますが食物ばかりでありません。生糸きいとも日本のは大層ゴム質が多くって西洋のはすくないそうです。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
この二ノ宮と云うのは、天下の二ノ宮と云われた生糸きいと商人で、一時は全く旭日きょくじつの勢いにあったと云う一家だと云う事だ。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
法学士はふがくし一人ひとり工学士こうがくし二人ふたり地方ちはう病院長びやうゐんちやう一人ひとり生命保険せいめいほけん会社員くわいしやいん一人ひとり日本鉄道にほんてつだう駅長えきちやう一人ひとり商館番頭しやうくわんばんたう築地つきぢ諸機械しよきかい)と横浜よこはま生糸きいと)とで二人ふたり
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
生糸きいと羽二重はぶたえの輸出につれて、その頃、居留地の商館から外地向けの絹ハンケチがおびただしく売れていたのである。
わたし蚕糸試験所さんししけんじょへいっておねがいして、一ぴきもらってきてあげるわ。あそこは、かいこや生糸きいとのことをしらべているお役所やくしょだから、かいこがかってあるとおもうわ。
正ちゃんとおかいこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
これは里ことば——すなわち、地方のことばですが、木曾の木とは、生糸きいとそばのと同じで、のままの麻のことを言った古いことばであろうということです。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その土地の内にさんする生糸きいとは一切いださずして政府の手より仏国人に売渡うりわたさるるよういたし、御承知ごしょうちにてもあらんが仏国は世界第一の織物国おりものこくにして生糸の需用じゅようはなはさかんなれば
母親達はあるいは繭を、あるいは手繰てぐり生糸きいとを、あるいは乾柿ほしがきを、あるいはわらつとに入れた泥だらけのわさびなどをそっと持ち出して来ては、その三分の一にも値いしないものと交換する。
当時江戸政府は生糸きいと貿易にひどい干渉を加えていた。——
尊攘戦略史 (新字新仮名) / 服部之総(著)
生糸きいとは、日本にっぽん大事だいじ産業さんぎょうだって、それで先生せんせいがみんなにってごらんとおっしゃったのです。
芽は伸びる (新字新仮名) / 小川未明(著)
木曾地方への物資の販路を求めて西は馬籠から東は奈良井ならい辺の奥筋まで入り込むことはおろか、生糸きいと売り込みなぞのためには百里の道をも遠しとしない商人がそこに住む。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
通商貿易つうしょうぼうえき利益りえきなど最初より期するところに非ざりしに、おいおい日本の様子ようすを見れば案外あんがいひらけたる国にして生糸きいとその他の物産ぶっさんとぼしからず、したがって案外にも外国品を需用じゅようするの力あるにぞ
あの人はぐずぐずしてやしません。横浜の商売も生糸きいとの相場が下がると見ると、すぐに見切りをつけて、今度は京都の方へ目をつけています。今じゃ上方かみがたへどんどん生糸の荷を
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
求めらるるものは幾世紀もかかって積み重ね積み重ねして来たこの国の文化ではなくて、この島に産する硫黄いおう樟脳しょうのう生糸きいと、それから金銀のたぐいなぞが、その最初のおもなる目的物であったのだ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あの人は即答はできないが、一同でよく相談して来ると言って、いったん中津川の方へ引き取って行きました。それから、あなた、生糸きいと取引に関係のあったものが割前で出し合いまして、二百両耳を
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)