ひきゐ)” の例文
武揚は是より先幕府の軍艦奉行であつたので、八月十九日軍艦数隻をひきゐて品川湾を脱出し、途次館山、寒沢さむさはに泊し、北海道を占領せむと欲して先づ室蘭附近に向つたのである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
正月しやうぐわつ二日目ふつかめゆきひきゐ注連飾しめかざりみやこしろくした。んだ屋根やねいろもとかへまへ夫婦ふうふ亞鉛張とたんばりひさしすべおちゆきおと幾遍いくへんおどろかされた。夜半よなかにはどさとひゞきことはなはだしかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
廿にぢう四年中に雑誌編輯ざつしへんしうの手を洗つてから、こゝとしること九年になります、ところの九の字がまた不思議ふしぎで、実は来春らいしゆんにもつたら、又々また/\手勢てぜいひきゐ雑誌界ざつしかいに打つて出やうとふ計画も有るのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
前田雅楽うたは兵二小隊をひきゐて廓に入り、兵器軍糧の授受に任じた。砲二十門、銃千六百挺、米五百俵である。将卒の降るもの千余人であつた。武揚は天保七年八月二十五日に生れた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
あやしともはなはだ異し! く往きて、疾くかへらんと、にはかひきゐくるまに乗りて、白倉山しらくらやまふもと塩釜しおがま高尾塚たかおづか離室はなれむろ甘湯沢あまゆざわ兄弟滝あにおととのたき玉簾瀬たまだれのせ小太郎淵こたろうがぶちみちほとりに高きは寺山てらやま、低きに人家の在る処
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
されども、人は往々にして自らひきゐるその己を識る能はず。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)