熊本くまもと)” の例文
東京帝国ていこく大学の招聘しょうへいに応じて、松江まつえ熊本くまもとの地を去ったことも、同じくヘルンの身にとっては、愛する妻への献身的けんしんてき犠牲ぎせいだった。
私はそのころ熊本くまもとで夏目先生に句を見てもらっていた。そして帰省するとおいに句を作らせて自分が先生のつもりでいたものらしい。
亮の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
熊本くまもとの暴動となり、かつては維新の大業をめがけて進んだ桐野利秋きりのとしあきらのごとき人物が自ら参加した維新に反して、さらに新政の旗をあげ
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ころし其血にて自分は盜賊たうぞく切殺きりころされしてい取拵とりこしらへ夫より九州へ下り肥後ひご熊本くまもとにて加納かなふ屋利兵衞といふ大家に奉公し七百兩餘の金子をかすめ夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その次は今から五年ばかり以前、正月元旦がんたんを父母の膝下ひざもとで祝ってすぐ九州旅行に出かけて、熊本くまもとから大分おおいたへと九州を横断した時のことであった。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
求馬は甚太夫喜三郎の二人と共に、父平太郎の初七日しょなぬかをすますと、もう暖国の桜は散り過ぎた熊本くまもとの城下を後にした。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
また一説いつせつには、その丸木橋まるきばしいま熊本くまもとあたりから、有明ありあけうみわたつて肥前國ひぜんのくに温泉岳うんぜんだけまでかゝつてゐたともひます。おそろしいおほきなではありませんか。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
葬式の日には、京城からひろしも帰つて来た。郷里の熊本くまもとからは、親戚のものも二三人出て来た。告別が済んで、骨は多磨墓地たまぼちに埋めることになり、小雨の中を、自動車が二台、列を作つて走つた。
落葉日記 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
そうして今度は熊本くまもとの高等学校にこしえました。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
明治二十九年の秋熊本くまもと高等学校に入学してすぐに教わった三角術トリゴノメトリーの先生がすなわち当時の若い田丸先生であった。トドハンターの本を教科書として使っていた。
田丸先生の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
あとにして遙々はる/″\と父の故郷は熊本くまもとと聞海山うみやまこえて此處迄は參り候へ共何程いかほど尋ても未だ父の在所ありかしれ申さず何成いかなる過去くわこ惡縁あくえんにて斯は兩親にえんうす孤子みなしごとは成候かと潸然々々さめ/″\泣沈なきしづめば餠屋もちやの亭主ももらなき偖々さて/\幼少えうせうにて氣の毒な不仕合ふしあはせ者かなとしきり不便ふびん彌増いやましさて云やう其方の父は熊本とばかりでは當所もひろ城下じやうかなれば分るまじ父の名は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
父は長い年月熊本くまもとに勤めていた留守で、母と祖母と自分と三人だけで暮らしていたころの事である。一夏に一度か二度かは母に連れられて、この南磧の涼みに出かけた。
涼味数題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
私が大学へ移ったのと入り代わりぐらいに、りょう熊本くまもとの高等学校へはいった。同じ写生帳の後半にはそこの寄宿舎や、日奈久温泉ひなぐおんせん三角港みすみこう小天おあまなどの小景がある。
亮の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それから十年の後高等学校在学中に熊本くまもと通町とおりまちの古本屋で仏語読本に鉛筆ですきまなしにかなの書き入れをしたのを見つけて来て独習をはじめた。抑圧された願望がめざめたのである。
読書の今昔 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
今から三十余年の昔自分の高等学校学生時代に熊本くまもとから帰省の途次門司もじの宿屋である友人と一晩寝ないで語り明かしたときにこの句についてだいぶいろいろ論じ合ったことを記憶している。
思い出草 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
熊本くまもと第五高等学校在学中第二学年の学年試験の終わったころの事である。
夏目漱石先生の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そうして、その夏休みに国へ帰ってから手当たり次第の材料をつかまえて二三十句ばかりを作った。夏休みが終わって九月に熊本くまもとへ着くなり何より先にそれを持って先生を訪問して見てもらった。
夏目漱石先生の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
熊本くまもとで漱石先生に手引きしてもらって以来俳句に凝って、上京後はおりおり根岸ねぎし子規庵しきあんをたずねたりしていたころであったから、自然にI商店の帳場に新俳句の創作熱を鼓吹したのかもしれない。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ある時熊本くまもとの町を散歩している先生の姿を見かけた記憶がある。
田丸先生の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)