とう)” の例文
旧字:
室内は、暗室あんしつになっていた。ただ桃色ももいろのネオンとうが数箇、室内の要所にとぼっていて、ほのかに室内の什器や機械のありかを知らせていた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
本能やりばなき、血のなかのものを、義貞もいま、三条高倉邸の離亭はなれの一とうに照らして、みずからの身に見ていた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
咄々とつとつ、酔漢みだりに胡乱うろんの言辞を弄して、蹣跚まんさんとして墓に向う。油尽きてとうおのずから滅す。業尽きて何物をかのこす。苦沙弥先生よろしく御茶でも上がれ。……
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その頃はまだ、電気灯やガスとうはなくて、ランプやろうそくをつけていましたから、どんなにしても、ふいに吹いてくる風のために消されてしまいました。
天狗の鼻 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
部屋へやには、ふゆだというのに、あたたかな空気くうきがほかほかとここちよくながれ、部屋へやにもろうかにも、ガスとうがいっぱいついていて、よるもまるでひるのようにあかるいのです。
運河は矢鱈やたらと曲り、曲り角の高い壁に折折をりをり小さな瓦斯がすとうの霞んでる所もある。出会ふ舟も無いのだが、大きな曲り角へ来る度に船頭が「ホオイ」と妙に淋しい調子で声を掛ける。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
百人町の一帯は、どの屋敷も、高さ五、六間もある杉丸太の先へ、杉の葉へ包んだ屋根を取り付けて、その下へとうろうを掲げてあることとて、さながらむらがるほしのように美しかった。
窓という窓がすっかり閉ってしまうと、室内には桃色のネオンとうが一つ、薄ボンヤリと器械の上を照らしていた。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この山頂の一とうの下に、次郎と月江との思わぬ邂逅かいこうがあったことは、くだくだしければここに略すとしておきまして、ひとつ、万太郎にとって聞きずてにならないのは
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
食前に散歩したホテルの木下路このしたみちと海岸の瀟洒とした風致が日本に在る如き感を与へた。海上に近く浮んだ三つの小島にあたる残照が、紗を隔ててとうを望む趣も旅中の心をやはらげた。
日本にっぽんではとても高価こうかなじゅうたんが、部屋へやいっぱいにしきつめてあって、アメリカじんがそのうえをくつのまま、へいきであるいているのにもおどろきましたが、どのいえにもガスとうがついていて
とうに集まり、人は電光に集まる。輝やくものは天下をく。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とうろう
「このネオンとうも消します。そうしないとうまく見えないのです」深山が云った。「しかしスウィッチは、ここにありますから、仰有おっしゃって下されば、いつでもけます」
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「そのときは、まだ赤色とうがついていたのですね」
鬼仏洞事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)