横着わうちやく)” の例文
そのくせ鼠は毎晩のやうに天井裏てんじやううらを走りまはつてゐた。彼等は、——殊に彼の妻は猫の横着わうちやくを憎み出した。が、それは横着ではなかつた。
貝殻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
『寐たなら起して聞け。今日おかあ樣からお使つかひを頼まれてゐるだらう。その品物を直ぐ持つて來いと言へ。あいつは近頃横着わうちやくになつた。』
反古 (旧字旧仮名) / 小山内薫(著)
横着わうちやくをきめて居るやうですが、實は十手捕繩を預つて居る八五郎に、たまには獨り立ちの仕事をさせて見たかつたのでせう。
銭形平次捕物控:282 密室 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
すくなくも、電燈でんとうくやうにると、人間にんげん横着わうちやくで、どうしてあんなだつたらうとおもふ、がそれはまつたくくらかつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
げませうの約束やくそくでよこしたのなれども、元來もとよりくれられぬは横着わうちやくならで、うでもことのならぬ活地いくぢゆゑれはおもつてわたしわたしくちらすだけに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
原田は白眼付にらめつけこゝ横着わうちやくものめ定めし汝は脇差ばかりではあるまじ外々の品もぬすみ取てうつたであらうと問詰ければほかに二本の脇差はさわぎのうちゆゑ火中へ入て御座りしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼女は、今思ひ出せるものを考へてそれを見てゐるのだ。現在の現實を見てゐるのではないのだ。彼女は、どういふ風な少女なのかしら——いゝ人なのだらうか、横着わうちやくな人なのだらうか。
ナニ横着わうちやくな事があるものか、イエあれはほんの心ばかりのいはひなんで、如何いかにもめづらしい物を旧主人きゆうしゆじんからもらひましたんでね、じつ御存知ごぞんぢとほり、ぼく蘭科らんくわはう不得手ふえてぢやけれど、時勢じせいに追はれてむを
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
兎 横着わうちやく
小さな鶯 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
何といふ横着わうちやくさ、半之丞があきれて默つて居ると、若い釆女は手文庫の中から二十五兩包を二つ出してポンとはふりました。
子供の無邪氣むじやきに對する惡例の危險、つた方から云へばつとめをゆるがせにする結果と紛亂——互の親和と信頼、それから出て來る自信——それに伴ふ横着わうちやく——反抗——そしておきまりの爆發。
組せし無念ぶねんか又は知ども當座たうざのみければよいとの不實心で知て居ながら横着わうちやく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
横着わうちやくな野郎ぢやありませんか」