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木賃宿
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きちんやど
ふりがな文庫
“
木賃宿
(
きちんやど
)” の例文
それに
木賃宿
(
きちんやど
)
のねどこのどんなに
固
(
かた
)
いことであろう。(もう二度とアーサとも遊べないし、その母親の
優
(
やさ
)
しい声も聞くことはできない)
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
宿屋というても
木賃宿
(
きちんやど
)
で本当の宿屋はチベットには一軒もない。ヤクの
糞
(
ふん
)
を貰ったその賃を払うだけですから
糞賃宿
(
ふんちんやど
)
というてもよいです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
ここにも、そこにも、ふらふらと、春の日を
中
(
うち
)
へ取って、白く
点
(
ひとも
)
したらしく、真昼浮出て
朦
(
もう
)
と明るい。いずれも御泊り
木賃宿
(
きちんやど
)
。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それは長三郎の近所の
獣肉屋
(
ももんじいや
)
へときどきに猿や狼を売りにくる甲州辺の猟師が、この頃も江戸へ出て来て、
花町
(
はなまち
)
辺の
木賃宿
(
きちんやど
)
に泊まっている。
半七捕物帳:18 槍突き
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
暗い
木蔭
(
こかげ
)
のベンチなどを一つ一つ覗き廻って見たり、浮浪人が泊り相な本所あたりの
木賃宿
(
きちんやど
)
へ、態々泊り込んで、そこの宿泊人達と
懇意
(
こんい
)
を結んで
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
米友は身分相応な
木賃宿
(
きちんやど
)
かなにかを求めているのだが、それに合格するのがついに見出せないで、浜松の城下をほとんど通りつくしてしまいました。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼はかく労働している間、その宿所は
木賃宿
(
きちんやど
)
、夜は神田の夜学校に行って、もっぱら数学を学んでいたのである。
非凡なる凡人
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
この
木賃宿
(
きちんやど
)
には、べつに
大人
(
おとな
)
の
乞食
(
こじき
)
らがたくさん
泊
(
と
)
まっていました。そして、
彼
(
かれ
)
らは、その
日
(
ひ
)
いくらもらってきたかなどと、たがいに
話
(
はな
)
し
合
(
あ
)
っていました。
石をのせた車
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
どこへ行っても
木賃宿
(
きちんやど
)
ばかりの生活だった。「お父つぁんは、家を好かんとじゃ、道具が好かんとじゃ……」
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
木乃伊
(
ミイラ
)
の爺さん一杯機嫌らしく、片肌を脱いで二の腕を曲げて見せると、真四角い
木賃宿
(
きちんやど
)
の木枕みたいな
力瘤
(
ちからこぶ
)
が出来た。指で
触
(
さわ
)
ってみると鉄と同じ位に固い。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
外郎売は、さがしていた、その眼を避けるように、船から降りた田舎娘は、一軒の
木賃宿
(
きちんやど
)
へついとかくれた。
篝火の女
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ふみ子さん、僕は本当に真剣に運動するために
木賃宿
(
きちんやど
)
に
這入
(
はい
)
りたいと思うんですが、あなたはどうです」
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
年を
経
(
へ
)
るにしたがって
曖昧
(
あいまい
)
になり、その後に知った
木賃宿
(
きちんやど
)
の
主人
(
あるじ
)
や、泊まり合わして心安くなった旅芸人の老人なぞの顔とごっちゃになり、まったく記憶の外に逃げ去って
抱茗荷の説
(新字新仮名)
/
山本禾太郎
(著)
木賃宿
(
きちんやど
)
、其れ等に雨雪を
凌
(
しの
)
ぐのは、乞食仲間でも
威張
(
いば
)
った手合で、其様な
栄耀
(
えいよう
)
が出来ぬやからは、村の
堂宮
(
どうみや
)
、畑の中の
肥料
(
こやし
)
小屋、止むなければ北をよけた
崖
(
がけ
)
の下、雑木林の落葉の中に
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
縁があって
手前
(
てめえ
)
の死んだ
母親
(
おふくろ
)
と夫婦になって、手前と云う子も出来て、甲州屋という、ま看板を掛けて
半旅籠
(
はんはたご
)
木賃宿
(
きちんやど
)
同様な事をして、何うやら斯うやら暮している事は
皆
(
みん
)
なも知っている
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
せっかくの好意で
調
(
ととの
)
えてくれる金も、
二三日
(
にさんち
)
木賃宿
(
きちんやど
)
で夜露を
凌
(
しの
)
げば、すぐ無くなって、無くなった暁には、また
当途
(
あてど
)
もなく流れ出さなければならないと、
冥々
(
めいめい
)
のうちに自覚したからである。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それからは三人が摂津国屋を出て、
木賃宿
(
きちんやど
)
に
起臥
(
おきふし
)
することになった。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
木賃宿
(
きちんやど
)
かな
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
細
(
ほそ
)
い
笛
(
ふえ
)
の
音
(
ね
)
で、やがて
木賃宿
(
きちんやど
)
の
行燈
(
あんどう
)
の
中
(
なか
)
へ
消
(
き
)
えるのであらうと、
合點
(
がつてん
)
して、
坂上
(
さかがみ
)
も
稍
(
やゝ
)
もの
言
(
い
)
ひが
穩
(
おだや
)
かに
成
(
な
)
つたのである。
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
わたしたちはいつも上等な
宿屋
(
やどや
)
にとまったことはなかった。たいてい行っても追い出されそうもない、
同勢
(
どうぜい
)
残
(
のこ
)
らずとめてくれそうな
木賃宿
(
きちんやど
)
を選んだ。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
その
町
(
まち
)
の
木賃宿
(
きちんやど
)
に
泊
(
と
)
まったときに、
父親
(
ちちおや
)
は、
子供
(
こども
)
を、
知
(
し
)
らぬ
男
(
おとこ
)
と
女
(
おんな
)
の
前
(
まえ
)
に
出
(
だ
)
して、なにかいっていました。
けしの圃
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
外の団員達も、それぞれ
木賃宿
(
きちんやど
)
とか、
遊廓
(
ゆうかく
)
とか泊り場所が分っていて、残らずアリバイが成立した。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
乗合い客の中には、
明日
(
あした
)
の米の買えない者もいた。暗い顔を持って京の
女衒
(
ぜげん
)
の家へ娘を売りにゆく者もいた。その日その日、
木賃宿
(
きちんやど
)
で疲れては眠る旅
商人
(
あきんど
)
も交っていた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこで、母と小林とはこっそり相談をしたのであろう、ある夜私達は家財道具のありったけをてんでに背負って
夜逃
(
よに
)
げをした。落ちついたさきは、ずっと
場末
(
ばすえ
)
の
木賃宿
(
きちんやど
)
だった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
鐘撞堂新道
(
かねつきどうしんみち
)
に巣を食う大道芸人の一群。その仲間が自ら称して道楽寺の本山という
木賃宿
(
きちんやど
)
。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
遠国の者ではあり、下谷あたりの
木賃宿
(
きちんやど
)
にころがっている宿無し同様の人間ですから、死ねば死に損で誰も詮議する者もない。心柄とは云いながら、ずいぶん可哀そうな終りでした。
半七捕物帳:21 蝶合戦
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
明日はカフエーでも探して、母を
木賃宿
(
きちんやど
)
にでも連れて行こうと思う。あったかいシュウマイを風呂敷に包んで母の下腹に抱かせる。しんしんと寒いので、私は木切れを探しては燃やす。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
わたしはまもなくオテル・デュ・カンタルに着いた、オテル(旅館)というのは名ばかりのひどい
木賃宿
(
きちんやど
)
であった。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
美しい
女
(
ひと
)
と若い紳士の、並んで立った姿が動いて、両方
木賃宿
(
きちんやど
)
の羽目板の方を見向いたのを、——無台が寂しくなったため、もう帰るのであろうと見れば、さにあらず。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そこは、ちょっとした宿場
外
(
はず
)
れの、
木賃宿
(
きちんやど
)
とも思われるほどの宿屋の軒下であります。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
少年
(
しょうねん
)
は、その
日
(
ひ
)
は
思
(
おも
)
いも
寄
(
よ
)
らぬたくさんな
金
(
かね
)
を、
人々
(
ひとびと
)
からもらいました。そして、
日暮
(
ひぐ
)
れに
木賃宿
(
きちんやど
)
へ
帰
(
かえ
)
ってきて
泊
(
と
)
まりました。
彼
(
かれ
)
は、ほかにいって
泊
(
と
)
まるところがなかったからです。
石をのせた車
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
日が暮れたら、
木賃宿
(
きちんやど
)
でも捜すつもりだったが、ふと町角の貼り紙に「職業を求める方はお出で下さい」とあるのを見つけ、探して行くと、
相生
(
あいおい
)
町二丁目の裏通りに、その家があった。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
宿といっても東京の
木賃宿
(
きちんやど
)
見たいなもので、それに食物もさしみの外のものはまずくて口に合わず、随分淋しい不便な所ではありましたが、その私の友達というのが、私とはまるで違って
赤い部屋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
かれは本所の
木賃宿
(
きちんやど
)
に転がっていて、お元から
強請
(
ゆす
)
る金を酒と女に遣い果たすと、すぐに又お鉄をよび出して来た。お元も嫁の身の上で、店の金銭を自分の自由にするわけにはゆかなかった。
半七捕物帳:37 松茸
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
木賃宿
(
きちんやど
)
にあるものは、みんなバルブレンのおっかあのうちのと同様にごりごりしていた。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
己はこの
怨
(
うら
)
みをはらすまでは、警察の手を逃れたいと、下宿に帰らないで
木賃宿
(
きちんやど
)
に泊っていた。貴様のすべっこい頬っぺたに、短刀を突込んで、グリグリかき回してやることばかり考えていた。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
両国の
木賃宿
(
きちんやど
)
で別れてから時々便りのあるはずなのが更にありません。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
てめえみたいな小僧は、とても当り前な武芸者や道場では、弟子にしてくれる筈がねえ。あの
木賃宿
(
きちんやど
)
にいる人なら、弱いので評判だ。てめえには、ちょうどいい師匠だから、荷持ちに使って貰えッて……。
餞別
(
せんべつ
)
にこの木剣を
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「一旦は逃げましたが、五、六日の後に深川の
木賃宿
(
きちんやど
)
で挙げられました。お鎌は竜濤寺に隠してある金に未練が残っていて、ほとぼりの冷めた頃に又さがしに行く積りであったそうです。悪党のくせに、よくよく思い切りの悪い奴で、そこがやっぱり女ですね」
半七捕物帳:46 十五夜御用心
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
わたしはバルブレンが
先
(
せん
)
に住んでいた場所の名をいろいろ紙に書きつけておいた。それを一つ、一つ、
訪
(
たず
)
ねて行った。ある
木賃宿
(
きちんやど
)
では、かれは四年前そこにいたが、それからはいなくなったと言った。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
“木賃宿”の意味
《名詞》
木賃(宿泊者が自炊するための薪代)を払い宿泊する安い宿。
宿泊料が安い宿。
(出典:Wiktionary)
“木賃宿”の解説
木賃宿(きちんやど)は、日本の宿泊施設の種類の一つ。
(出典:Wikipedia)
木
常用漢字
小1
部首:⽊
4画
賃
常用漢字
小6
部首:⾙
13画
宿
常用漢字
小3
部首:⼧
11画
“木賃”で始まる語句
木賃
木賃泊
木賃旅籠