手籠てかご)” の例文
さはいへまた久留米絣をつけ新らしい手籠てかごかゝえた菱の實賣りの娘の、なつかしい「菱シヤンヨウ」の呼聲をきくのもこの時である。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
農婦はその足もとに大きな手籠てかごを置き家禽かきんを地上に並べている。家禽は両あしを縛られたまま、赤い鶏冠とさかをかしげて目をぎョろぎョろさしている。
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
その通りに行ってみると、上の杣道そまみちから山の果物を手籠てかごにして降りて来た女があった。女は振り仰いですぐ教えてくれた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくしは日々手籠てかごをさげて、殊に風の吹荒れた翌日などには松の茂った畠の畦道あぜみちを歩み、枯枝や松毬まつかさを拾い集め、持ち帰って飯をかしたきぎの代りにしている。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
(兵士ら腕を組み棚をつくる。バナナン大将手籠てかごを持ちてその下をくぐりしきりに果実を収む。)
饑餓陣営:一幕 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
発見者であるわらび取りの娘の手籠てかごにいれられ、ゆられゆられしながら太郎は村へ帰って来た。
ロマネスク (新字新仮名) / 太宰治(著)
髪をふりみだし、竹で出来ている手籠てかごのようなものを腕にぶらさげていた。
三つの挿話 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
五人とも包みや手籠てかごを持って、弥市などはてんでめたようすだった。
似而非物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あゝ、日毎ひごと暮るればこゝに来て、庭造る愛らしき器物うつわもの手籠てかご、如露のそばちかく、空想にふければ、あゝわがわかかりし折の思出おもいいで。幸福を歌ふすすなきは、心の底よりほとばしり出づ。
牛のすぐ後ろへ続いて、妻が大きな手籠てかごをさげて牛のしりを葉のついたままのなまの木枝で鞭打しばきながらく、手籠の内から雛鶏ひよっこの頭か、さなくば家鴨あひるの頭がのぞいている。
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
夏近くなって山へ遊びに来る人がぼつぼつ見え初めるじぶんになると、父親は毎朝その品物を手籠てかごへ入れて茶店まではこんだ。スワは父親のあとからはだしでぱたぱたついて行った。
魚服記 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「御夫人以下、みな手籠てかござるを持って、草を摘んでおるらしいです。摘草つみくさですな」
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夏と秋との手籠てかご