もと)” の例文
正義を守るこれ成功せしなり、正義よりもとるまた正義より脱する(たとい少しなりとも)これを失敗という、大廈たいかくうそびえて高く
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
一般の安全をはかりて保護の世話をなし、人民は政府の命令に従いて指図の世話にもとることあらざれば、公私の間まるく治まるべし。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
あるいはまた己れの利益にもとるような事が起って来ると、自分一人で言っても利目ききめがないから平生へいぜい徒党を組んで居るやつが陰に陽に相呼応して
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
今度の御巡幸について地方官にさとされた趣意も、親しく地方の民情をしろし召されたいのであって、百般の事務が形容虚飾にわたっては聖旨にもとるから
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
同時にこれ人間が神の意志にもとり、自然の法則に反抗する力ある事を示すものと思はれ候。人間を夜の暗さより救ひ、死の眠りよりさますものはこの燈火に候。
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しかしながらかくの如き勢力が新勢力に競争して勝つということは進化の理にもとっている。中古の遺物として蒙古的勢力、亜細亜アジア的勢力が欧羅巴ヨーロッパに存在している。
東亜の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
想像力を待って、始めて、まったき人性にもとらざる好処置が、知慧ちえ分別の純作用以外にきてくる場合があろうなどとは法科の教室で、どの先生からも聞いた事がない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分が愛する物を食うは愛の意にもとるようだが、愛極まる余りその物を不断身を離さずに伴うには、食うて自分の体内に入れその精分を我身に吸収し置くに越した事がない。
したがってその筆鋒は辛辣を極め、用語野卑にして文壇の礼義にもとるもの多く、為に甚だしく学界の顰蹙を招くべき事についても、あえて顧慮する程の余裕がなかったのであった。
法隆寺再建非再建論の回顧 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
「あないぶせ」とかようにはじめに置くこと感情の順序にもとりて悪し。『万葉』にてはかくいわず。全くこの語を廃するか、しからざれば「煙立ついぶせ」などように終りに置くべし。
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
おっしゃられれば胸の苦しさが増すばかり、また貴郎に致しましても、そのようにおっしゃって、私の心を苦しめますのは、ほんとに私を愛して下さる、お志にももとると申すものでござります。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
政府ノ処置、此趣旨ニもとルトキハ、すなわチ之ヲ変革シ或ハ之ヲ倒シテ、更ニこの大趣旨ニ基キ、人ノ安全幸福ヲ保ツベキ新政府ヲ立ルモ亦人民ノ通義ナリ。是レ余輩ノ弁論ヲタズシテ明了ナルベシ。
「君の説はちょっと面白いが、学理より実験にもとるじゃないか」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
両様並び行われてあいもとらず、たがいに依頼して事をなすといえども、その地位はおのずから両立のいきおいをなせるものなれば、政治の囲範いはんに文学をつなぐべからず。
ああ、大正の世人既に姦淫双斃そうへいの事を説いて以て盛世の佳話となす。この時に当つて僕ひとり耳をおおうて鄙語ひご聴くに堪へずとなすが如きははなはだ通俗の本旨にもとるものなり。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
朝旨にもとらず、三条の教憲をしかと踏まえて、正を行ない、邪をしりぞけ、権衡けんこうの狂わないところに心底を落着せしめるなら、しいて天理に戻るということもあるまい。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかし疑いも無くこのたびの勝利に依り、東亜細亜アジアに於ては日本政府の意にもとって如何いかなる強国も我儘わがままをやることは出来ないというだけの点には、必ず目的を達するに相違ない。
東亜の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
「江談抄」に、非人たる賀茂葵祭の放免ほうべんが、綾羅錦繍を身に纏うて衣服の制にもとるとの非難に対し、彼らは非人なるが故に、国法の関するところにあらずとの説明が与えられている。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
下ノ関で外国の船艦に発砲したからとかいそうなものであるに、ソンな事は一言いちごん半句もわないで、イヤどうも京都に暴れ込んだとか、あるいは勅命にもと台命たいめいそむ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それでは民の御父たる天賦の御職掌にももとるであろう。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
余答えていわく、天理にもとることを唱うる者は孟子にても孔子にても遠慮に及ばず、これを罪人と言いて可なり。妻をめとり、子を生まざればとてこれを大不孝とは何事ぞ。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
道理にもとりて曲をこうむるの日に至りては、世界中を敵にするも恐るるに足らず。初編第六葉にも言えるごとく、「日本国中の人民一人も残らず命を棄てて国の威光を落とさず」
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)