心掛こころがけ)” の例文
「お前が、そういう心掛こころがけで買うのなら、時々は買ってもいい。お父様とうさまは、お好きなほうなのだから。」と、おっかさんは言いました。
納豆合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
西洋婦人と日本婦人とは平生へいぜい心掛こころがけがそれほど違う。料理に手数がかかるといって面倒がるような人は亜弗利加あふりかの土人生活をするがいい。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
私は時々横眼を使って、裾からもすれば洩れようとするところの琅玕ろうかんのような王昭君の脛を盗み見ようと心掛こころがけたが、仲々成功しなかった。
沙漠の美姫 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これに反し、われわれの最もそそぐべき心掛こころがけは平常毎日の言行——言行と言わんよりは心の持ち方、精神の態度である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
私は差引計算や、バランスをとる心掛こころがけが好きではない。自分自身を潔く投げだして、それ自体の中に救いのみちをもとめる以外に正しさはないではないか。
いずこへ (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
単なるドグマに捕えられず、あくまで合理的に真理を求めんとする心掛こころがけ——それでなければ神慮しんりょにはかなわない。われ等は心から、そうした態度を歓迎する。
その書遺かきのこしたものなどを見れば真実正銘しょうみょうの漢儒で、こと堀河ほりかわ伊藤東涯いとうとうがい先生が大信心だいしんじんで、誠意誠心、屋漏おくろうじずということばか心掛こころがけたものと思われるから
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
孝行なせがれにうってつけの気だてのよい嫁だ。老人の俺に仕事をさせまいとする心掛こころがけがよくわかる——。
麦の芽 (新字新仮名) / 徳永直(著)
そんな心掛こころがけは、このたちにはそもそも註文ちゅうもんするだけ無理むりなのです。そういうところは、この子たちも大人おとなおなじです。「すすめッ」と、世間せけんつよい人たちはいいます。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
一晩に二三度は倉から家の周囲まわりを夜廻りする位だから、おめおめ金を流して助かる様な馬鹿は見ない、要心が宜しくないから、人様に迷惑をかけるので、俺のように心掛こころがけかったら
厄払い (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
無論むろんあの海嘯つなみ相当そうとう沢山たくさん人命じんめいほろびたのでございますが、心掛こころがけ遺族いぞくけっしてうらみがましいことをもうさず、ぬのもみな寿命じゅみょうであるとあきらめて、こころから御礼おれいべてくれるのでした。
わたくしは今日こんにち父の跡を襲いで、留守居役を仰付おおせつけられました。今までとは違った心掛こころがけがなくてはならぬ役目と存ぜられます。実はそれに用立ようだつお講釈が承わりたさに、御足労を願いました。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
……それじゃに、かねてのお心掛こころがけか。いやなりが間に合うたもののう。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして何がしかの口銭を得ようとするのが商売の正しい心掛こころがけである。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それよりも家へ帰ってその葡萄酒で兎を料理したら家族一同が珍味にきます。何の遊びでも家族一同を楽しましめる心掛こころがけでなければ文明流と申されません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
いな、結婚ぐらい、なんべんやりなおしてもよいではないですか。退屈するまで、やり直しなさい。最も、やり直すのが面倒くさかったら、やり直す必要はないです。これ又見上げた心掛こころがけだな。
余はベンメイす (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
一二女中じょちゅうと一しょわたくしもとへおまいりにたこともありました、普通ふつうなら一々参拝者さんぱいしゃにとめることもないのですが、みぎ女中じょちゅうもうすのがめずらしく心掛こころがけのよい、信心しんじんあつでございましたから
これはどんな場所でも何の場合でも自分の心掛こころがけ次第で出来ない事はありません。よく嚼んで食べると一度に多くの分量を食べ過ぎる事もありませんから自然と衛生法にかないます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
子爵打笑うちわらい「それはチト過激ですね」中川「アハハ今の男子にそういっては無理でしょう。けれどもこれから先の男子はその位の心掛こころがけがなければなりません。自分の身を大切に思ったらその身を ...
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)