寂然ひつそり)” の例文
「溶けたツて、此方こつちの眼じアあるまいし、餘計よけいなおせつかいだわ。」と輕く投出すやうに謂ツた。かと思ふと海酸漿うみほゝづきを鳴らす音がする。後はまた寂然ひつそりする。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
四家町は寂然ひつそりとして、唯一軒理髮床の硝子戸に燈光あかりが射し、中から話聲が洩れたので、此處も人間の世界だなと氣の付く程であつた。間もなく花屋町に入つた。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ほどなく寂然ひつそりとしてきさうだから、汽車きしやなかでもくれ/″\いつたのは此処こゝのこと、わたしけるまでることが出来できない、あはれとおもつてしばらくつきあつて
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ただ寂然ひつそりと、無言むごん
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
四家町よつやちやう寂然ひつそりとして、唯一軒理髪床の硝子戸に燈光あかりが射し、中から話声が洩れたので、此処も人間の世界だなと気の付く程であつた。間もなく花屋町に入つた。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
かんざしゆら氣勢けはひは、彼方あちらに、おぢやうさんのはうにして……卓子テエブル周圍まはりは、かへつて寂然ひつそりとなりました。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
室が寂然ひつそりしてゐるので、時計とけいの時をきざおとが自分の脈膊みやくはくうま拍子ひやうしを取つてハツキリ胸に通ふ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「りんよ、りんよ、權平ごんぺい權平ごんぺいよ、りんよ、權平ごんぺいかたな寄越よこせ、かたな寄越よこせ、かたなを。」とよびかけたが、權平ごんぺいも、りんも、寂然ひつそりしておとてない。たれあへ此處こゝきれものを持出もちだすものか。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
遠くで鷄の聲の聞えた許り、神寂びた宮居は寂然ひつそりとして居る。周匝あたりにひゞく駒下駄の音を石甃いしだゝみに刻み乍ら、拜殿の前近く進んで、自分は圖らずも懷かしい舊知己の立つて居るのに氣付いた。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
室内は、寂然ひつそり靜返ツてゐた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
遠くで鶏の声の聞えた許り、神寂びた宮居は寂然ひつそりとして居る。周匝あたりにひびく駒下駄の音を石甃に刻み乍ら、拝殿の前近く進んで、自分は図らずも懐かしい旧知己の立つて居るのに気付いた。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
まるつきりこゑが……いや四邊あたり寂然ひつそりして、もののおときこえない。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
むかし本陣ほんぢんかまへのおほきなたてものは、寂然ひつそりとしてる。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
寂然ひつそりした日中ひなか硫黄ゆわうしま陰氣いんき音響ひゞき
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)