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汽車に連るる、野も、畑も、はたすすきも、薄にまじわくれないの木の葉も、紫めた野末の霧も、霧をいた山々も、皆く人の背景であった。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自分では奈何どうしてもく氣になれない、此心をよく諒察くみとつて、好く其間に斡旋してくれるのは、信吾の外にないと信じてゐるのだ。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「お屋敷から下りました当時、ずいぶん縁談もあったのですが、どうしても嫁ぐと申しませんで、とうとうきそびれてしまいました」
日本婦道記:小指 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「お父上の立場もあります。親のいいつけでもあります。義母はは異母妹いもうとたちの気持もあります。……こんどはくときめました」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「心当りはうんとありますよ、親分、伊丹屋の旦那のところへきたかったのは、この界隈かいわいでも、五人や三人じゃありません」
だから、基督も天国では「めとらず、かず」だと言つてゐる。天国のやうな結構づくめなところでは、結婚は賭博ばくちと一緒に御法度となつてゐるのだ。
恒子 あんな人のところへ、どうしてく気になつたか知ら……。デリカシイつていふものがちつともないの。
驟雨(一幕) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「けれど姉さん、何方どつちかへくとおめなさらねばならんでせう、両方へ嫁くわけにはならないんだもん」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
いつか、アグリやカヤノの例があるから、お前たちは好きな所へけと、いっぱし理解のあるような新しい言葉を吐いたことが今は針になっていねの心をつく。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
「この間の縁談のことだけれど、おしもは、木村さんと安藤さんと、どちらへきたい気なんだえ?」
女心拾遺 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
お前が富山へく、それは立派な生活をして、栄耀えようも出来やうし、楽も出来やう、けれどもあれだけの財産は決して息子の嫁の為に費さうとて作られた財産ではない
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
どうせ此の女が金を持って貴公のとこくのじゃアないか、いて分らん事を云えば公然にようか
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
誰が好き好んで若い身空を那麽あんなところへくものですか。お母さんだって若い時の記憶おぼえもありましょうに、真正ほんとうに少しは私の身になって考えて呉れてもさそうなものだ。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
まして金のある上流の紳士から眼をつけられて愛せられ、求婚されるというようなことは夢にもありはしない。とかくして、彼女はある官庁の小役人の処にくこととなった。
頸飾り (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
あなたのところへく気なんかに、なりはしないでしょ?……東京へ帰ったら、お宅へ伺うという約束で、出張手当までとっておきながら、お伺いもせず……あなたのために
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
こういう事実を考えないで、昔は親だけが勝手に決めて、泣きながらくなんていわれてきたのは、こうしないとロマンスが面白くないから、王昭君の系統の話を結びつけたのである。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
文麻呂 あなたが大納言のところへなぞかれたら、それこそ大変な不幸ですよ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
自分は自分で早く身を固めようと思っていた矢先だったから、それほどにいうものならと、ついあんな処へくようになったんです。けれどもその時は、何もこっちから思ったんじゃない。
雪の日 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「鉄幹君に酬ゆ」の篇には「めとらずかず天童てんどうきよきぞはふと思ふもの」
『行く春』を読む (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あれはお公卿くげ様というものが貧乏なものだから、せめてあの方のかれたうちだけでも、お勝手許かってもとの御都合がよいようにと祈る心からであった。それがあんなことになろうとは夢にも思い設けなんだ。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「僕が言ってあげようか。姉さんはくことがいやだって——。」
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「死ぬつもりでく……がきいてあきれる。」、と彼は思つた。
凸面鏡 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
氣の毒なことに、お常は自分のせゐでき遲れ、四十島田の恥をさらすのを、最初は兄のせゐにし、兄が死ぬと兄嫁のお角のせゐにし、四十を
青麟に一言ひとことや、直ちに霹靂へきれきであった。あたかもこの時の糸七に、屋の内八方、耳も目も、さながら大雷大風であった。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いつになろうと、誰が、お身などへ寧子ねねをくれるものか。たとえ、けというても、寧子が承知するものでもない」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後妻にきたがるもので、先妻が男の生活をおもちや箱のやうにぶちこはした後だつたら、どんな女だつて天の使ひのやうに立派に見えるものだといふが
お前のく唯継だつて、もとより所望のぞみでお前をもらふのだから、当座は随分愛しも為るだらうが、それが長く続くものか、かねが有るから好きな真似も出来る、ほかたのしみに気が移つて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「ウム」と思案せる侯爵「成程——うぢや松島、山木の言ふ所道理至極しごくと聞かれるでは無いか」松島はたばこくゆらしつゝ「かし、閣下、御本尊がきたいと申すものを、之を ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
目下いま持上つてゐる縁談が、種々いろいろの事情があつて両親始め祖父おぢいさんまでが折角勧めるけれど、自分では奈何どうしてもく気になれない、此心をよく諒察くみとつて、うまく其間に斡旋あつせんしてくれるのは
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「あたしきたくないんだけれど……。」
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「梨枝子さんのかれた先は、この間伺ひましたが、やつぱり、うまく行つてるぢやありませんか。洋行は洒落てるな。しかし、一と船遅らすとなるとたいへんですね。僕も、その間ずつと此処にはゐられないでせうけれど……」
落葉日記 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
あの女の心はいつでも勘定づくで冷たくなつてゐる——三十五になる意氣地のない伊勢屋の治三郎のところへく氣になつたのはそのためさ。
けば、後から好きになるものだ。——どこへ輿入こしいれしようと、親の許にいるようなわけにはゆかぬ」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
如何どうしても菅原様へくことが出来ないならば、私は一旦いつたん菅原様へ献げた此のきよ生命いのちの愛情を、少しも破毀やぶらるゝことなしにいだいたまゝ、深山幽谷へ行つてしま心算つもりだつて——
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
富山へけば、家内も多ければ人出入ひとでいりも、はげしし、従つて気兼も苦労も一通の事ぢやなからう。その中へ入つて、気をいためながら愛してもをらん夫を持つて、それでお前は何をたのしみに生きてゐるのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
めとらずかぬ清らさに
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
「心當りはうんとありますよ、親分。伊丹屋の旦那のところへきたかつたのは、此界隈でも、五人や三人ぢやありません」
これにはまた、みかども常々お悩みらしくあって、近ごろはとみに自分への寵幸もおとろえぎみとなっていた折……はしなくも「義貞へけ」との御諚ごじょうであったという。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「働き者ですよ。遠い縁續きださうですけれど、不きりやうできおくれだから、私などは働くより外に能はないと言つて居ます。感心な人で」
わたくしから申し告げても、もしこんどの縁談も気がすすまず、種々いろいろと、泣いてなど、処女心おとめごころを申されると、女は女の気もちにくみしていてけとも云われなくなります
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お由良は少しは醉つてゐる樣子でしたが、——近いうちに伊勢屋へくことになつたから、古い關係はないことにして、これから道で逢つても口を
お由良は少しは酔っている様子でしたが、——近いうちに伊勢屋へくことになったから、古い関係はないことにして、これから道で逢っても口を
父親の怪我やら家の沒落ぼつらくなどで、その當時にしてはき遲れになりましたが、それが今では幸せになつて、父親の介抱を一と手に、甲斐々々しく賃仕事をして
少しき遲れの二十歳はたち娘、選り好みが激しいので評判になつただけに、お絹の美しさは全く拔群でした。
その當時にしては少しき遲れ氣味で、死んだお駒と比べるせゐか、あまり見よげな娘ではありません。
その当時にしては少しき遅れ気味で、死んだお駒と比べるせいか、あまり見よげな娘ではありません。
四十三の處女お常は、贅澤と我儘が嵩じてきそびれたので、決して醜い女ではなかつたのです。
姉のお豐は二十三四、家柄だけの婿選みがうるさく、そのため反つてき遲れた感じですが、色の淺黒い、背の高い、何處かに品位があつて、隨分婿選みくらゐは言ひさうです。
ヘエー、近いうちに伊勢屋へくことになったから、その心算でいてくれ。何の約束を
二十三の眞太郎と同じ年、利口過ぎてきおくれたといふ、それは一かどの美人です。