如才じよさい)” の例文
よく肥つた三十五六の男で、愛嬌のある顏、要領の惡い口調、一應はボーツとしたやうに見えて、思ひの外如才じよさいがないところがあります。
掛けやがて一座と成て酒宴さかもりうち後家に心有りなる面白可笑おもしろをかし盃盞さかづきことに後家のお勇も如才じよさいなき人物しろものゆゑ重四郎が樣子を熟々つく/″\見るに年はまだ三十歳を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこでは、梅子が如才じよさいなく、代助の過去にちゝ小言こごとばない様な手加減てかげんをした。さうして談話の潮流を、成るべく今帰つた来客の品評の方へつてつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此の冷泉に如才じよさいは露なけれども、まだ都慣れぬ彼の君なれば、御身が事可愛いとしとは思ひながら、返す言葉のはしたなしと思はれんなど思ひ煩うておすにこそ、咲かぬうちこそ莟ならずや
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
もう、其處等そこら如才じよさいはござりません、とお手代てだい。こゝで荷鞍にぐらへ、銀袋ぎんたい人參にんじん大包おほづつみ振分ふりわけに、少年せうねんがゆたりとり、手代てだいは、裾短すそみじか羽織はおりひもをしやんとかまへて、空高そらたか長安ちやうあん大都だいとく。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
世馴よなれた人の如才じよさいない挨拶あいさつとしか長吉ちやうきちには聞取きゝとれなかつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
店で働いて居るだけに、如才じよさいのないことはお縫と反對で、敷居際しきゐぎはに手を突いて、支配人と平次の顏を等分に見上げました。
己が役にして居る所に兩國米澤町の花の師匠にて相弟子の六之助と云ふは同所どうしよ廣小路ひろこうぢの虎屋の息子むすこなるが何事も如才じよさいなく平生へいぜい吉之助とはまじはあつかりしが或時あるとき吉之助を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
れて如才じよさいないあつかひに、にがつたかほしてうなづいて
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
色の淺黒い、立居振舞のハキハキした、鋭さと如才じよさいなさと、誰にでも好感を持たせる機智と愛嬌の持主らしく見えます。
計り口にあふやうに如才じよさいなくあきなふゆゑに何時も一ツものこさずみなうり夕刻ゆふこくには歸り來り夫から又勝手かつて
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それから醫者なんてものはいろんな事を知つて居るものだ、如才じよさいもあるまいが、主人のこと、身内のこと、奉公人達のことも出來るだけ聽いて來るが宜い
これは三十五六の柄の大きい、ぽーつとした感じの男ですが、調子にはなか/\如才じよさいないところがあります。
「番頭のさい八はちよいと男つ振りの好い三十男で、遊び好きで如才じよさいがなくて、金さへありや、新宿の大門を一と晩でも閉めて見たいといふ、のぼせた野郎で」
用人の水谷六郎兵衞、恐ろしく如才じよさいない調子です。五十前後の用人れのした滑めらかな人間で、平次と八五郎と顏見合せて苦笑ひしたほどの愛想振りです。
中は舊家らしい頑丈な構へですが、思ひの外質素で、檢屍の役人を送り出したばかりの主人六右衞門と、老番頭の茂兵衞はそれでも如才じよさいなく二人を迎へてくれました。
鍵屋金右衞門は十七八年の間に數萬の金をこさへた、鬼のやうな六十男。剛情がうじやうで我慢強くて、冷酷で無慙で、そのくせ、如才じよさいの無い男、金貸しに生れついた樣な人間です。
如才じよさいなく訊いて見ましたよ。——ところが何んにも知らないんださうです」
「それも如才じよさいなく訊きました、すると、何よりの道樂はつりだけ、昨夜も夜釣に行つて曉方あけがた歸つたといふことでしたよ、こいつは突つ込みやうがありませんよ、尤も連れがあつたわけでないから、疑へば疑へるわけだ」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「其處に如才じよさいがあるものか、この通り」
平次は如才じよさいなく三人に挨拶しました。
などと如才じよさいもありません。
などと如才じよさいもありません。