女子おんな)” の例文
こはそもいかに! 賊はあらくれたる大のおのこにはあらで、軆度とりなり優しき女子おんなならんとは、渠は今その正体を見て、くみしやすしと思えば
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二十三年前に捨てた女子おんなに似て居るところは無いか。母親はお前に捨てられてから、犬のように十年も生きて居たよ。
死の予告 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
わたくしはただ自分じぶんむように、一とすじ女子おんなとしてあたまえみちんだまでのことなのでございまして……。
己は誰も云いそうな、簡単で平凡なことばと矛盾しているような表情を再びこの女子おんなの目の中に見出した。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
男子も交る時もありましたが、集りは多く女子おんなばかりで、それも年若い美しい方たちがおもでした。
大塚楠緒子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
お力も何処どことなくなつかしく思ふかして三日見えねばふみをやるほどの様子を、朋輩ほうばい女子おんなども岡焼ながらからかひては、力ちやんお楽しみであらうね、男振おとこぶりはよし気前はよし
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「このような深夜にこのような処で若い女子おんながただ一人何が悲しくて泣いておるぞ」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
えゝ女子おんな綺麗きれえな所を見せなくちゃアなんねえ……綺麗な虫は……ア玉虫がい、女の美しいのを女郎屋じょろやなどではい玉だてえから、玉虫のようなお前様をと目見るより、いなご
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
カムの女子おんな達はどうも余程すげないようで、愛らしい所はちっともない。チベットの人間は表面うわべは男もおとなしいように見えて居るくらいであるから、女もまたなかなか表面は優しく見えて居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
途中で、ははあ、これが二十世紀の人間だな、と思うのを御覧なすったら、男子おとこでも女子おんなでもですね、唐突だしぬけ南無阿弥陀仏なむあみだぶつと声をかけてお試しなさい。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
りき何處どことなくなつかしくおもふかして三日えねばふみをやるほどの樣子やうすを、朋輩ほうばい女子おんなども岡燒おかやきながらからかひては、りきちやんおたのしみであらうね、男振おとこぶりはよし氣前きまへはよし
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
えゝ引続ひきつゞきのお梅粂之助のお話。何ういう理由わけ女子おんなの名を先に云って男子おとこの名をあとで呼ぶ。お花半七とか、お染久松とか、夕霧伊左衞門とかいうような訳で、実に可笑おかしいものでござります。
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
大門際おほもんぎわ喧嘩けんくわかひと出るもありけり、見よや女子おんな勢力いきほひと言はぬばかり、春秋はるあきしらぬ五丁町のにぎはひ、送りの提燈かんばんいま流行はやらねど、茶屋が廻女まわし雪駄せつたのおとに響き通へる歌舞音曲おんぎよく
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
など遣ったものだが、あえてこれは冷評ひやかしたのではない。その証拠には、小松原と一足ちがいに内を出て、女子おんな扇と御経料を帯に挟んで、じりじりと蝉の鳴く路を、某寺なにがしじへ。供養のため——
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
無念の情は勃然ぼつぜんとして起これり。繊弱かよわ女子おんなの身なりしことの口惜くちおしさ! 男子おとこにてあらましかばなど、言いがいもなき意気地いくじなさをおもい出でて、しばしはその恨めしき地を去るに忍びざりき。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
微笑ほおえみつつ女子おんなはかく言い捨てて乗り込みたり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)