唐戸からど)” の例文
比較的間口の広いその玄関の入口はことごとくほそ格子こうしで仕切られているだけで、唐戸からどだのドアだのの装飾はどこにも見られなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それら、花にもうてなにも、丸柱まるばしらは言うまでもない。狐格子きつねごうし唐戸からどけたうつばりみまわすものの此処ここ彼処かしこ巡拝じゅんぱいふだの貼りつけてないのは殆どない。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何時いつかこの二日三日前、周防様すおうさまと二人で、こく過ぎ、お廊下を見廻みまわっておりますと、怪しい人影が御寝所の唐戸からどを開けて、出てまいりましたから、手燭てしょくをさしつけましたところ
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
浅草の中見世なかみせで買って来たお多福の人形が飾って有り、唐戸からどを開けると、印度物いんどもの観世音かんのんの像に青磁の香炉があるというのでなし、摩利支天様の御影みえいが掛けて有り、此方こっちには金比羅様のお礼お狸さま
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼はもう寝室の唐戸からどを足で蹴明けて廊下に出てゐた。
An Incident (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
丹塗にぬりの柱、花狭間はなはざまうつばりの波の紺青こんじょうも、金色こんじきりゅうも色さみしく、昼の月、かやりて、唐戸からどちょうの影さす光景ありさま、古き土佐絵とさえの画面に似て、しかも名工の筆意ひついかない、まばゆからぬが奥床おくゆかしゅう
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)