“吮(す)” の例文
其父(そのちち)、戰(たたか)ひて(七三)踵(くびす)を旋(めぐら)さずして、遂(つひ)に敵(てき)に死(し)せり。呉公(ごこう)、今(いま)又(また)其子(そのこ)を吮(す)ふ。妾(せふ)、(七四)其死所(そのししよ)を知(し)らず。是(ここ)を以(もつ)て之(これ)を哭(こく)するなり
貫一は唯胸も張裂けぬ可く覚えて、言(ことば)は出(い)でず、抱(いだ)き緊(し)めたる宮が顔をば紛(はふ)り下つる熱湯の涙に浸して、その冷たき唇(くちびる)を貪(むさぼ)り吮(す)ひぬ。宮は男の唾(つばき)を口移(くちうつし)に辛(から)くも喉(のど)を潤(うるほ)して
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
自分妾狂(めかけぐるい)しながら息子(むすこ)の傾城買(けいせいがい)を責(せむ)る人心、あさましき中にも道理ありて、七(しち)の所業誰(たれ)憎まぬ者なければ、酒呑(のん)で居ても彼奴(きゃつ)娘の血を吮(す)うて居るわと蔭言(かげごと)され、流石(さすが)の奸物(かんぶつ)も此処(ここ)面白からず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
してヘーラの乳を吮(す)い不死の神力を禀(う)けしめた
蛭が尻っぺたに吮(す)い附いて楽んでいるうちに
起(き)爲(た)めに(七二)之(これ)を吮(す)ふ。卒(そつ)の母(はは)之(これ)を聞(き)いて哭(こく)す。人(ひと)曰(いは)く、『子(こ)は卒(そつ)にして將軍(しやうぐん)自(みづか)ら其疽(そのしよ)を吮(す)ふ。何(なん)ぞ哭(こく)するを爲(な)す』と。母(はは)曰(いは)く、『然(しか)るに非(あら)ず。往年(わうねん)、呉公(ごこう)、其父(そのちち)を吮(す)ふ。 ...
手の甲の血を吮(す)ひつつ富山は不快なる面色(おももち)して設(まうけ)の席に着きぬ。予(かね)て用意したれば、海老茶(えびちや)の紋縮緬(もんちりめん)の裀(しとね)の傍(かたはら)に七宝焼(しちほうやき)の小判形(こばんがた)の大手炉(おほてあぶり)を置きて、蒔絵(まきゑ)の吸物膳(すひものぜん)をさへ据ゑたるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)