かれ)” の例文
一四一かれ善果ぜんくわもとづきて遷化せんげせしとならば、一四二道に先達せんだちの師ともいふべし。又活きてあるときは一四三我がために一個ひとり徒弟とていなり。
われいまだかれを見しことなければ、もし過失あやまちての犬をきずつけ、後のわざわいをまねかんも本意ほいなしと、案じわづらひてゐけるほどに。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
拾うためうつむいてかれの足を見せしむると、足がなくてニョッキリ尾ばかりあったので、蛇精が化けたと判り、寡婦寺にもうで身をきよめたといい、北欧の神話にも
殺さんと欲せしはかれなり。銃は他の我にわたしゝなり。われは身を脱せんとして撥條はつでうに觸れたり。アヌンチヤタ聞き給へ。我等二人は命に懸けて君を慕ひしなり。
かれを打てか、自らを殺せか——呼吸いきの下で、かすかに震えた、女は、まだ全く死んではいないのである。
独り予は医者で、しかも軍医である。そこで世間で我虚名を伝うるとともに、門外の見は作と評との別をさえ模糊もこたらしめて、かれは小説家だということになった。何故に予は小説家であるか。
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かれが母は人並ににじり書もすれば教へて代写させばやとやうやうに思ひかへしつ、第百七十七回の中音音おとね大茂林浜おおもりはまにて再生の段より代筆させて一字ごとに字を教へ一句ごとに仮名使かなづかいおしゆるに
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
かれがたのもしきをよろこびて、のこる田をもりつくしてかねへ、一一絹素きぬあまた買積かひつみて、京にゆく日を一二もよほしける。
その好む処には、君子も迷ふものと聞く、かれが好むものをもて、釣りいだしてわなに落さんには、さのみ難きことにあらず
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
我胸裏には萬感叢起さうきせり。ベルナルドオこゝに在り。我とかれ咫尺しせきす。われはかく思ふと共に、身うちの悉くふるひわなゝくを覺えて、力なく亭内なる長椅の上に坐したり。
禪師ぜんじ見給みたまひて、やがて禪杖ぜんぢやうとりなほし、作麽生そもさん何所爲なんのしよゐぞと一喝いつかつして、かれかうべうちたまへば、たちまちこほり朝日あさひふがごとせて、かの青頭巾あをづきんほねのみぞ草葉くさばにとゞまりける。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれ十二分の標緻きりょうなしといえども持操貞確、つくえを挙げて眉にひとしくした孟氏のむすめ、髪を売って夫をたすけた明智あけちの室、筆を携えて渡しに走った大雅堂の妻もこのようであったかと思わるる。
貴人九二古語ふることかれこれわきまへ給ふに、つばらに答へたてまつるを、いといとでさせ給うて、九三かれろくとらせよとの給ふ。
されば暫く心を静め給ひて、わがいふ事を聞き給へ。そもその獲物と申すは、この山のふもとの里なる、荘官しょうやが家の飼犬にて、僕かれには浅からぬ意恨うらみあり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
露国の古話に蛇精が新米寡婦方へその亡夫に化けて来て毎夜ともに食い、同棲して、あさに達し、その寡婦火の前のろうのごとくせ溶け行く、その母これに教えて、かれと同食の際わざとさじおと
ビッデンハムでは九月二十二日ごとに白兎を緋の紐で飾り運んでアガサ尊者のヒムンを歌い村民行列す。未婚の女これに遇わば皆左手の拇指おやゆびと食指を伸して兎に向い処女よ処女よかれをここに葬れと唱う。