一攫ひとつか)” の例文
またそつとてゝとき頸筋くびすぢかみをこそつぱい一攫ひとつかみにされるやうにかんじた。おつぎはそと壁際かべぎは草刈籠くさかりかご脊負せおつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
今かの森の中にて、黄金こがね……黄金色なる鳥を見しかば。一矢に射止めんとしたりしに、あに計らんやかれおおいなるわしにて、われを見るより一攫ひとつかみに、攫みかからんと走り来ぬ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
あるいはみぞへ湯を抜く漆喰しっくいの穴より風呂場を迂回うかいして勝手へ不意に飛び出すかも知れない。そうしたら釜のふたの上に陣取って眼の下に来た時上から飛び下りて一攫ひとつかみにする。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたしは思いめぐらすまでもなく、外套のポケットから銅貨を一攫ひとつかみ出して巡査に渡した。
些細な事件 (新字新仮名) / 魯迅(著)
長柄の太刀脇差を三五縄しめなわでぐるぐる巻にし、茶筌ちゃせんにゆった髪は、乱れたままである上にはかまもはかないと云う有様である。そして抹香を一攫ひとつかみに攫んで投げ入れると一拝して帰って仕舞った。
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「へえ、なに、わしが一攫ひとつかいてたの打棄うつちやつたんでがした」勘次かんじういつてあをつた。巡査じゆんささら被害者ひがいしや勘次かんじはたけ案内あんないさせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
金眸は打点頭うちうなずき、「憎き犬の挙動ふるまいかな。よしよし今に一攫ひとつかみ、目に物見せてくれんずほどに、心安く思ふべし」ト、かつ慰めかつ怒り、やがて聴水をさきに立てて、すねにあまる雪を踏み分けつつ
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
それでりた手間てまかへすのがいひがへしである。大豆だいづにははこぶととも一攫ひとつかみにしてはうへにしてさきまるいてたがひみき支柱しちうるやうにしてにはぱいてゝした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)