鼓の音つづみのね
柳橋の船宿の主翁は、二階の梯子段をあがりながら、他家のようであるがどうも我家らしいぞ、と思った。二階の方では、とん、とん、とん、と云う小鼓の音がしていた。 風の無い晴れきった、世の中がうつらうつらしているようにおもわれる春の日の正午過ぎであ …