机の上の書類を取ってふところに入れる。長押なげしから中折れの帽を取って被る。転瞬倏忽てんしゅんしゅくこつの間に梯子段を降りるのである。純一はあきれて帽をつかんであとに続いた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)