昨日まで読むことを禁じられてあった蕃書も訳され、昨日まで遠ざけられた洋学者も世に出られることとなると、かつて儒仏の道の栄えたように
蘆洲と共に六名家の詩を編選した真下晩菘は蕃書取調所の役人で、この時年六十二である。その伝は大正三年坂本三郎氏の著した『晩菘余影』に細説せられている。
彼らは早く西洋の事情に通じる境涯にも置かれてあって、幕府の洋書取調所(蕃書取調所の後身)に関係のあったものもあり、横浜開港場の空気に触れる機会の多かったものもある。
蕃書は禁じて読ませない、洋学者は遠ざけて近づけない、その方針をよいとしたばかりじゃありません、国内の人材まで鎖攘してしまった。御覧なさい、前には高橋作左衛門を鎖攘する。