耿々かう/\)” の例文
父の耿々かう/\の気が——三十年火のやうに燃えた野心が、かうした金の苦労のために、砕かれさうに見えるのが、一番瑠璃子には悲しかつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
彼にもまた耿々かう/\たる志はあつたのだ。時勢を憂へ、時勢を知ることに於て、立場こそ異なれ、敢へて薩長の志士に劣るものではなかつたのである。
五十有余歳の高齢で、いはゆる天誅組に参加し、戦敗れて刑死した国学者伴林光平ともばやしみつひらなどの日記を見ると、耿々かう/\たる忠誠が、殆んど報いられてゐないやうな気がして、気の毒に堪へないのである。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)