糸垂しだ)” の例文
彼が鍾愛しょうあいして措かない糸垂しだれ桜の巨木は、わけても、この庭の王妃のように咲き誇っていたが、常とちがって、今朝は、内蔵助の眸に、その白い花の一つ一つが
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内蔵助は、良雪のしてくる眸へね返すような眸をちらと向けた。次にはむッつりと顔を横にし、この四五日のうちにすっかり色のせた糸垂しだれ桜へ向って、脣を結んでいるのだった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)