“粘土(つち)” の例文
おれの顔に似た面を粘土(つち)で造って、毎日よく目にかかる竈の柱に掛けておけ、そうすれば家がかならず富み栄えると教えてくれた。
東奥異聞 (新字新仮名) / 佐々木喜善(著)
武蔵は、だまって、心のうちだけで、粘土(つち)まみれの翁に、頭を下げてそこの軒を離れた。坂を仰ぐと清水寺の崖道が見える——
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、その一人のほうの六十ぢかい翁(おきな)が、箆(へら)と指のあたまで、今、一個の茶碗になりかけている粘土(つち)をいじっているのを見ると、武蔵は、自分の不遜な気持がたしなめられた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
路傍にたたずんで見ているうちに、武蔵は、自分もその粘土(つち)を捏(こ)ねてみたくなった。彼には、何かそういうことの好きな性質が幼少(ちいさ)い時からあった。——茶碗くらい出来るような気がする。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)