築泥ついぢ)” の例文
我足の尼寺の築泥ついぢの外に通ふこと愈〻繁く、我情の迫ること愈〻切に、われはこの通路かよひぢの行末いかになるべきかをあやぶまざること能はざるに至りぬ。
くづれた築泥ついぢがちの道などは好きで何度も歩いたが、私はそこを通りながら思ひがけず伊勢物語の一節などをなつかしく思ひ出すやうな氣分にさせられるやうなことはあつても
黒髪山 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
是より先きわれは四井街の邊を過ぐるごとに、この尼寺の築泥ついぢの蔭にこそ、わが嘗て抱き慰めし姫君は居給ふなれ、今はいかなる姿にかなり給ひしと、心の内におもひ續けざることなかりき。