箇人こじん)” の例文
一体誰が誰を葬るのか、文壇が葬むるのか、世間が葬むるのか、文壇なら、世間なら、そんなものには、箇人こじんを葬る資格がない。
解脱非解脱 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
母の亡くなったあと、私はできるだけ妻を親切に取り扱ってやりました。ただ、当人を愛していたからばかりではありません。私の親切には箇人こじんを離れてもっと広い背景があったようです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「神あり、理想あり、然れどもこれ皆自然より小なり。主義あり、空想あり、然れども皆自然より大ならず。何を以てかくいふと問ふ者には、自分は箇人こじんの先天的解剖をすゝめようと思ふ」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
あるいは箇人こじんのもって生れた性格の相違といった方がたしかかも知れません。私は私のできる限りこの不可思議な私というものを、あなたに解らせるように、今までの叙述でおのれをつくしたつもりです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)