考えることのきらいな彼は、イライラしてくると、いつも独り駿馬しゅんめを駆って曠野こうやに飛び出す。秋天一碧しゅうてんいっぺきの下、嘎々かつかつひづめの音を響かせて草原となく丘陵となく狂気のように馬を駆けさせる。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)