知己しりあひ)” の例文
自分の家に出入りしてゐる以上、会ふ機会、知己しりあひになる機会が、幾何いくらでも得られると思ふと、彼女の小さい胸は、歓喜のために烈しく波立つて行くのだつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
私も品川に子供をさらはれた知己しりあひを持つて居りますが、日頃ふだんはろくに見てもやらなかつた子供でも、惡者にさらはれたとなると、まるで氣狂ひのやうになつて
また、私が持つてゐるよりも一層實際的な經驗を、自分と同じ性格の人と親しく交際し、私の側にゐる人達よりも、もつと性格の違つた人々と知己しりあひになりたいと願つたのだ。
僕の父なんかも、何時の間にか、あんな連中と知己しりあひになつてゐるのですよ。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
知己しりあひになつてゐる男性に——その職業も位置も身分も十分分つてゐない男性に、突然自動車の同乗を勧める瑠璃子夫人の大胆さに、勧められる信一郎の方が、却つてタヂタヂとなつてしまつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)