真当面まとも)” の例文
九月朔日ついたちの朝は、南風みなみ真当面まともに吹きつけて、縁側の硝子ガラス戸を閉めると蒸暑く、あけると部屋の中のものが舞上って為方しかたがなかった。
九月一日 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
真当面まともにじいやに顔をのぞき込まれるのがいやなので、泣叫ぶ甲子を女中の手に渡すと、一郎はいきなり倒れた家の屋根に上って、瓦をめくり始めた。
九月一日 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
流石さすがに少しむっとして、澤は養子を真当面まともに見ながら、やはり弁解の言葉に苦しんでしまった。その様子をじっと見守っていた養子の目には、いたずらな微笑が浮んでいた。
九月一日 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)