疑懼ぎぐ)” の例文
彼のかすかな疑懼ぎぐは、あの日と同じ気持でいる旧主であった。一旦いったんの約定を固く守って、みずからに死をかけると同時に相手方にも死を求めている気持だ。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
小僧孝吉の悧巧さに引付けられたのと、妙にその自信あり氣な調子に、一脈の疑懼ぎぐを感じたのです。
実に聞き取りにくい言語をろうしまして、何か昂奮こうふんしておる、この折衝に小ひとときを費しましたでしょう、つまり、欺かれるのではないかと疑懼ぎぐするのでした、な
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
思いに疑懼ぎぐがきざして来ると、黙っているのはなお心細くなる。高倉は自然に歩調をおとしていた。それとなくもう一度相談してみたかった。けれども彼が云いださないうちに鋸屋が何かしゃべっていた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)