そっと、李逵が法院窓の障子に舌で穴をあけて内を覗いてみると、なんと、この森沈しんちんたる深夜なのに、羅真人はなお、椅子いすに端座したままであり、くち玉枢宝経ぎょくすうほうきょうを小声でしているていなのだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)