浮誇ふこ)” の例文
できるだけ多くの注意をこうとする浮誇ふこの活動さえ至る所に出現した。そうして次の色彩に席を譲るべくすぐ消滅した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自己弁護はともすれば浮誇ふこにさえも流れる。それゆえ私は苦しむ。真実を愛するがゆえに私は苦しむ。
生きること作ること (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
お延の自覚から云えば、一つ家に寝起ねおきを共にしている長い間に、自分の優越を示す浮誇ふこの心から、柔軟性じゅうなんせいに富んだこの従妹いとこを、いつの間にかそう育て上げてしまったのである。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は二三日前に一人の女の不誠実と虚偽と浅薄と脆弱ぜいじゃく浮誇ふことが露骨に現わされているのを見た。しかし私は、興奮して鼻の先を赤くしている彼女の前に立った時、憐愍れんびんと歯がゆさのみを感じていた。
転向 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)